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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 25〉文学が語る「夢」「幸福」/朝大文学カフェにて

勤務先である朝鮮大学校朝鮮問題研究センター・朝鮮文化研究室の企画の一環として、今年度「朝大文学カフェ」という文学読書会形式の学習会を立ち上げた。その本格的な運営に先立つプレイベント、試験的なパイロット…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 22〉疎外の自覚、そして加害の自覚を/安部公房③

「けものたちは故郷をめざす」(1957)のラスト、敗戦後中国から引揚げ日本上陸を目前にしながらも、朝鮮人高石塔とともに密輸船の船倉に監禁された主人公久三は、脳裏で次のようにつぶやく。「もしかすると、日…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 21〉不可能な「故郷」と、「監禁状態」/安部公房②

2012年に新発見された短編「天使」、19歳の処女作「(霊媒の話より)題未定」が収録された初期短編集の発売(2013)などにより、近年、安部公房の最初期を見直す動きが活発なようだ。生前未発表作品を含め…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 20〉朝鮮支配の「制服」をまとった者/安部公房①

元旦に放映されたNHK・Eテレのスペシャル番組「100分deナショナリズム」にて、漫画家のヤマザキマリさんが安部公房の小説「方舟さくら丸」(1984年)を紹介していて、にわかに話題となった。放送後Am…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 19〉「万延/令和元年」の暴力/祝祭/大江健三郎⑤

「万延元年のフットボール」(1967年)は、寓意と隠喩、象徴性に満ちた難解な文体と、土俗的雰囲気、そして明治維新前夜と敗戦直後から60年安保の時代まで、百年にわたる歴史を重層させた、大江文学の前後期を…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 18〉「文学的想像力」の陥穽/大江健三郎④

「おれはこの現実世界から拒まれている。おれはこの世界の正規の人間じゃない」。そして「怪物」となり、少女殺人犯となった、「叫び声」(1963)の登場人物・呉鷹男。死刑判決となる彼は、朝鮮人の父親と日本人…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 17〉閉塞の時代、「不幸な若者たち」/大江健三郎③

「いいか、お前のような奴は、子供の時分に締めころしたほうがいいんだ。出来ぞこないは小さいときにひねりつぶす。俺たちは百姓だ、悪い芽は始めにむしりとってしまう」―1958年発表の、「芽むしり仔撃ち」の一…