〈民族教育と朝鮮舞踊11〉夢にまで見た祖国での「ソルマジ公演」①


第1次在日朝鮮学生少年芸術団のソルマジ公演の様子(中央:金善恵さん)

在日朝鮮学生が初めて参加する

在日朝鮮学生たちにとって、新年を金日成主席と一緒に祝う「迎春(ソルマジ)公演」に参加することは、夢のような話であった。

祖国の子どもたちの伝統あるソルマジの集いは、1949年12月31日の夜に始まった。当時、解放山の麓にあった主席の邸宅に子どもたちとその父母たちが集まり、素朴ながらも歌や踊りで楽しく意義深い夜を過ごしたのが始まりであった。金正日総書記の指導のもとソルマジ公演は毎年行われ、57年は大同門映画館で、その後は平壌学生少年宮殿や2・8文化会館、平壌体育館、万景台学生少年宮殿で、芸術的才能に優れた全国の子どもたちが集まる水準ある公演へと発展していった。主席はどんなに忙しい時でも、子どもたちと新年を祝うこの集いにだけは欠かさず参加された。そのためこの集いは、祖国の子供たちにとっても夢の舞台であった。このように由緒あるソルマジ公演に、在日朝鮮学生が参加できると誰が想像したであろうか!

1986年に初めてその知らせに接した時、私は胸がいっぱいで体の震えが止まらなかった。「夢の舞台」にウリハッキョの子どもたちが立ち、主席の前で歌や踊りを披露することを頭に思い描くだけで胸が熱くなった。その時、その場に一緒にいた朝大音楽科の高創一主任先生と感激を分かち合い、在日学生たちが出演する演目の歌詞を見て、作品はどのように創ろうか、学生選抜はどのようにしたらいいのかを関係者と協議した。あらゆる面で初めてのことなので緊張もした。

歌舞物語「원수님 뵙고싶어 왔습니다」(主席にお逢いしたくて)。異国の地に降る雪は冷たいが、祖国で迎える新年の雪はあたたかいと歌いながら踊り、主人公の説話などが挿入された作品である。主席にお目にかかりたくて、海を越えて在日朝鮮同胞と学生たちの願いを込め、夢の舞台に立った切々たる心情を歌った作品であった。

先ずは、歌詞を基に舞踊曲を作曲し振り付けを行うことと、初・中級部の児童・生徒の選抜などが急務であった。初めてのソルマジ公演に何の準備もなく行くことはできないと、高創一先生が舞踊曲を作曲、東京第四初中級の舞踊教員と私とで初歩的に舞踊を創った。その時に作曲した舞踊曲のデモテープは今でも大切に保管している。選抜審査は3回にかけて行い、中央芸術競演大会終了のその場で最終審査を行った。初級部12人、中級部13人の舞踊部の学生と、語り手として2人の中級部男子学生が選ばれた。11月末には東京に集い1週間ほど合宿しながら歌と舞踊の練習や渡航の準備を行い、「三池淵」号に乗って祖国に向かった。

ところが、祖国ではすでに歌舞物語の作品が準備されていた。在日朝鮮学生が初めてソルマジ公演に参加するというので、綿密に準備して待っていたらしい。曲も、振り付けも全部一新され、すぐに練習に取りかかった。

12月31日、2・8文化会館の玄関で主な演目の主人公たちが主席をお迎えした。その時のことを金善恵さんは「時が止まり、足が地につかない何かフワフワした夢のような気持ちと、胸の高鳴りを覚えながらも、ファンファーレが鳴った瞬間に涙が溢れ出てくるのを抑えられなかった」と話す。

ソルマジ公演の休憩時間(前列中央の舞踊按舞家キム・キョンシム先生と一緒に。87年1月12日撮影)

舞台の袖で待機していた子どもたちも号泣していた。泣いたら駄目だと、泣くと表情が暗くなり、説話の声がかすれて話せなくなると、何度も釘を刺されていたのに無駄であった。

ソルマジ公演のちょうど中間くらいに演じられた在日学生の歌舞物語は、始まった瞬間から涙なしでは見ることができないほど感動的な作品であった。舞台上の子どもたちの泣き声がマイクに入り、ソロを歌ったチョン・ヘヨンも、傍唱の子どもたちも泣きながら歌った。

後で聞いたところでは、主席はこの作品をご覧になり「在日朝鮮学生ですか。内容も良いし、上手です。総聯で選抜した学生たちですか。とても上手です」とおっしゃったそうだ。

ソルマジ公演は1月3日から約10日間、昼夜2回、平壌市民をはじめ勤労者や青年学生たちを前に行われた。祖国の人たちの間では「ソルヌナ、ソルヌナ」(新年の雪よ)という歌詞が流行し、センセーショナルを巻き起こしたという。そして1987年1月22日、在日朝鮮学生少年芸術団は金日成主席との記念撮影の栄誉まで授かることになった。

夢の舞台に立った子どもたちは、祖国に着いた瞬間から暖かい愛情ともてなしを受けた。公演に携わるスタッフが同行し、生活環境や健康状態にまでとても細やかに気を遣ってくれた。日本では考えられないほど手厚い待遇であった。公演に参加する万景台革命学院の学生たちをはじめ、祖国の先生や学生たちとの交流もとても印象深かった。

在日同胞がまだそれほど祖国を行き来できていない中で、幼い初中級部の児童・生徒である自分たちが祖国に来て、在日学生たちの代表として主席の前で踊れることがどれほど素晴らしく幸せなことなのか。彼女たちは一生に一度、経験することがかなうかどうかという幸福感を実体験として味わったのであった。

ソルマジ公演は、在日朝鮮学生たちに祖国と主席の配慮と慈しみを、直接身をもって教えてくれた公演であった。

私は、第2次在日朝鮮学生少年芸術団の芸術担当として、この「夢の舞台」を体験する名誉にあずかった。次回、その時の話を書く。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)