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短編小説「燃える島」2/黄健

2021年12月29日 08:49 短編小説

砲兵以外の他の兵士たちも、崩れた塹壕を補修したり、偽装したり、それに負傷した戦友の運び出しをしたりで瞬時もじっとしていなかった。まるで、水車の米つきのように、李大勲中隊長を軸として、他の人々は申し分のない水受けとなり、水車の輪となり、米つきの臼となって、まめまめしく立ちまわっていた。

李大勲中隊長は、怒りを込めた血走った目を、はるかかなたの海上に向けていたが、その姿はまるで怒れる虎が身の置きどころを知らぬとでもいったふうであった。堅く一文字に結ばれた口、その秀でた額は、不屈の闘志と誇りを示していた。服はぼろぼろにされ、あらわになった肩や腕や胸は爆風で砂をくい込んだり、裂傷を負ったりして、真赤な血がそこからしたたっていた。隊員たちの固く一つに結ばれた燃えるような闘志と忠誠心は、この中隊長を中心として、ますますゆるぎないものとなっていた。彼は絶え間のない艦砲射撃の最中でも、砲座のある壕と壕の間を、まるで家の中を歩くように無造作に行ったり来たりしては戦闘の指揮をしたり、照準鏡をのぞいたりした。そのあい間には、崩れた塹壕を掘りおこし、偽装をほどこし、戦死した兵士を自分の手で埋め、負傷した兵士たちの後送をいちいち指図したりした。

やや少し離れたところで、傷ついた一人の兵士が、戦友の差し出した背を二度、三度拒みながら叫んだ。

「いやだ! 行くもんか、まだまだおれはたたかえるんだ。最後まで残るんだ!」

暗い気持ちでこの様子を見ていた中隊長は、つかつかとその場に近づいた。

「さあ、ぐずぐずせずにおぶさるんだ! きみは自分のことばかり考えている! 他の人の足手まといになることはちっとも考えていないじゃないか!」

負傷した兵士に向かって彼はこう厳しい口調で言った。兵士はしぶしぶこれに従ったが、中隊長は彼らが中隊の塹壕から出ていくのを確かめるまではその場を動こうとしなかった。それから中隊長は塹壕の出口まで歩いていって、硝煙につつまれたうすもやの中をそろそろと立ち去っていく兵士たちの後ろ姿が見えなくなるまでじっとその場にたたずんでいた。すっかり彼らが立ち去ってしまうと、中隊長は感情が激した人のように他の仲間たちには目もくれないで、まっすぐ砲座の方へ出向いていった。

もう夕闇が迫っていて、敵機は影をひそめた。夕飯のことを気にしていた炊事係の兵士がなぎさへ降りていった。水際の岩の間に、敵の艦砲射撃で驚いたのかフグが三、四尾ふくれた白い腹を仰向けにしてばたばたやっているのを見つけた。ところが炊事兵がそこへ着くか着かないかというときであった。不意に飛んできた砲弾が岩を砕き、炊事兵を倒してしまった。それを見ていた一兵士が思わず「あっ!」と叫んだ。

(つづく)

 

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