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各氏が日本に提言/平壌宣言19周年集会で【詳報】

2021年09月22日 16:59 主要ニュース 暮らし・活動

“米に対し確固たる外交展開を” “歴史の不正義に声を”

朝・日平壌宣言19周年を記念して行われた集会「朝鮮戦争の終結と日朝国交正常化交渉の再開を!」(18日、東京・文京区民センター、主催=「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を! 市民連帯運動」)では、新外交イニシアティブ(ND)代表の猿田佐世(弁護士)、NPO法人ピースデポ特別顧問で長崎大学客員教授の梅林宏道の両氏が講演し、在日本朝鮮人人権協会の朴金優綺氏が特別報告を行った。各氏の発言を紹介する。(まとめ・金淑美)

朝・日平壌宣言19周年を記念して行われた集会

 

米の東アジア政策/猿田佐世

猿田佐世氏

猿田氏は日本と米ニューヨーク州で弁護士として活動するかたわら、自身が事務局長を務めるシンクタンク・新外交イニシアティブを拠点に米議会でロビー活動を行うなど市民外交を展開する。著書に「自発的米従属―知られざる『ワシントン拡声器』」(角川新書、2017年)などがある。

猿田氏はまずバイデン政権の東アジア政策について「同盟国との協力強化を通じて中国に対峙しようというのが外交戦略の中心」だと指摘。日米首脳会談(4月)やG7(6月)における中国けん制の動きに言及し、「トランプ政権に負けず劣らず対中国強硬姿勢をとり続ける一方、前政権との違いもある。新型コロナウイルスや気候変動問題では中国と協力する姿勢を示しており、一定の節度はある。トランプ政権下で同盟国との関係は悪化したが、バイデン政権は軍事、経済的に米国の力が低下する中、それを同盟国に補ってもらいながら中国に対峙しようとしている」と述べた。

米中による「陣取り合戦」が激しさを増す昨今、「米中によるオセロのメインフィールドは東南アジアだ」と猿田氏。「フィリピンやシンガポールなど、米国か中国かいずれかを選ばされること自体を拒絶し、両方と向き合っていこうとする国がある。しかしアジアの中で日本は『米国ブロック』の一番の腹心になっている。政府は米国と利益が一致していると主張するがまやかしだ。東南アジア諸国のように、日本がとるべき姿勢は米国に対して確固たる外交を展開することだ」と苦言を呈した。

そのうえで同氏は、米国内のさまざまな動きに言及。下院における朝鮮戦争終結宣言や北南の離散家族再会を求める決議案の可決などに触れ、「米国の議会では朝鮮をめぐってさまざまな決議案が毎年しぶとく出されている。日本の国会は何かを決定するということができない膠着状態だが、日本の国会議員もがんばってほしい」と述べた。

米朝対話と日本の課題/梅林宏道

梅林宏道氏

梅林氏は冒頭、「米朝交渉の膠着状態について米国の対話提案に朝鮮が応じないと思っている人が多いが、実際はそうではない。ボールは米国側にある」と明言したうえで、米朝交渉の現状と課題を示した。

同氏は、朝鮮半島核問題をめぐる朝鮮の原則的立場や90年代以降の米朝交渉の経過を示しながら、「私は朝鮮が核を放棄する可能性はあると考える。朝鮮が核武装は米国による核戦争の脅威に対する防衛手段だと、条件が整えば非核化する意思があると一貫して示してきたからだ」と指摘。シンガポールにおける朝米首脳会談の精神を踏まえて、「バイデン政権にまず求められるのは、段階的・相互的措置の方法論とそれに基づく具体的提案」だと主張した。

そのうえで、朝鮮半島非核化のために日本が追求すべき三つの課題として、▼日朝国交正常化▼北東アジア地域の平和と安全への関与▼グローバルな核兵器廃絶への被爆国としての使命―だと指摘。「日本が核兵器に依存しない政策に転換することは、シンガポール米朝合意の履行と噛み合っていく重要な入り口となる」と持論を展開した。

同氏は、朝鮮半島の非核兵器地帯(当該地域の国が核兵器の生産・実験・入手・保有・配備・管理することを禁止するとともに、核保有国がこれらの国々に核攻撃・威嚇を行わないことを誓約することによって形成される、核兵器のない地帯)条約の締結をめざすうえで、「北南、米、中、ロの5カ国条約となり、日本が不在となれば在日米軍の存在により安全の保証が完結せず、日本の核武装への懸念が残るため不十分だ。日本を含めた北東アジア非核地帯をめざすべき」とし、「そうすることで日本が明確な政策を持って日本が朝鮮半島の非核化プロセスに関与することになり、またそれが日朝関係正常化交渉の一つの重要な接点になる」と訴えた。

コロナ禍の朝鮮学校差別/朴金優綺

朴金優綺氏

朴金優綺氏は、昨年3月のさいたま市による朝鮮幼稚園へのマスク不配布、日本政府による学生支援緊急給付金制度からの朝鮮学校除外問題の不当性について、国連の「特別手続き」(特別報告者)による差別是正要求の内容を示しながら解説した。

日本政府がコロナ禍で困窮する学生への支援策である学生支援緊急給付金制度から朝鮮大学校を除外したことに関して、今年2月、国連の特別報告者らは共同書簡を出し、差別是正を求めた。

朴金氏はまず、特別手続きの機能など国連の人権保障システムについて概説。学生支援緊急給付金制度からの朝鮮大学校除外が「マイノリティーの教育機会を脅かし、人種や民族に基づく差別にあたるおそれがある」と指摘した特別報告者の書簡に対して、日本政府は「日本人・外国人問わず、対象機関に通えば受給資格があり、差別に当たらない」と回答した。

これについて同氏は、「外国大学の日本校や外国ルーツの学生が主に通う日本語教育機関を同制度の対象とする一方で朝鮮大学校だけが対象外とされていることが問題であり、日本政府自ら朝鮮大学校を高等教育機関と認めていることと矛盾し、歴史的に朝鮮学校が諸制度から除外されてきたことを踏まえれば除外という結論が先で理由は後付けだ」と問題点を指摘した。

最後に同氏は、「歴史を振り返ると、朝鮮につながる者を排除しようとする日本の継続する植民地主義が強化され続けている。その根底には日本の植民地支配責任や戦争責任の回避、朝鮮半島の分断体制・朝米の戦争構造に日本が積極的に加担し続けている問題がある。朝鮮学校差別の問題と向き合うことはこうした構造に向き合い、克服することにつながる。歴史の不正義を見過ごさず、共に声をあげてほしい」と聴衆に呼びかけた。

(朝鮮新報)

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