国際交流基金が中止判断/在日精神病患者に関する映像作品


「表現の不自由展」に代表されるように、昨今、日本国憲法21条が保障する「表現の自由」の侵害問題が深刻だ。とりわけ日本の加害の歴史や、差別と偏見のスティグマに関する内容を含んだ多くの作品が発表の機会を奪われている。

今年3月、国際交流基金が主催するオンライン展覧会「距離をめぐる11の物語:日本の現代美術」(3月30日~5月5日)で発表予定だった、アーティストの飯山由貴さん(33)による戦前の精神病院に残されていた在日朝鮮人の患者についての記録を用いた映像作品「In-Mates」が、基金の判断によって発表を中止された。

国際交流基金は、「コロナとともに生きる時代の新たな芸術交流の促進」を目指して同展覧会を主催したが、飯山さんの作品に関して、①暴力的な発言や歴史認識を巡って非生産的な議論を招きかねない場面が含まれるものだった、②全編を通して視聴すれば必ずしも懸念はあたらないのかもしれないが言葉は独り歩きしてしまう可能性がある、③主催者としては、作品に関してどこをどう修正すべきかといった指示はできないと考えている、④展覧会の開催日時も迫っており今後改めて協議を重ねる時間もない―などとしながら開催直前に公開の中止を告げた。

「In-Mates」スチル(撮影:金川晋吾)

この一件について飯山さんは、「心身を尽くして作品に協力してくださった人、過去に確かに存在した人びとに対しても、とても失礼なこと。そして、それがこの国の文化に関わる行政の視点なのだとすれば非常に恥ずかしいこと。その硬直した価値観には、自分の活動を通して、今後も向き合っていくつもりだ」と見解を述べた。

飯山さんは現在、過去の記録物や人への取材を手がかりに、社会と個人の影響関係に関心を持ちながら映像やインスタレーションを制作している。社会的なスティグマが生成される過程と、その経験が語られ直すことに関心を持ち、特に精神病患者や在日朝鮮人をテーマに取り上げ、過去の出来事の痕跡にインスピレーションを得た作品制作を続けてきた。2020年のヨコハマトリエンナーレでは、在日無年金障害者たちの生に焦点を当てた170分の長編映像を発表、日本社会の矛盾に一石を投じてきた。

(李鳳仁)

飯山さんの作品「オールド ロング ステイ」の上映情報

第三回東京国際ろう映画祭

・会場上映
日時:2021年12月5日(日)
10:30~「オールド ロング ステイ」
13:20ごろ~ 飯山由貴(本作監督)舞台挨拶(30分程度)
会場:渋谷ユーロライブ 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F

・オンデマンド配信(国内+海外)12月4日-9日配信(9日間配信)

チケットの入手方法などは映画祭公式サイトをご確認ください。 https://www.tdf.tokyo/(特設サイトは10月に開設予定)