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短編小説「幸福」5/石潤基

2021年08月04日 08:00 文化・歴史

「われわれは往々にして、われわれが勝ち取った幸福に対して、その外面にばかり目を向けるあまり、本質を見落とす場合が多いようだ。いいかね? 好色漢の幸福が女性にあるとすれば、守銭奴の幸福は金銭にある。一方、病気にかかった人間の幸福は、きみのように健康な人間は日ごろ忘れている健康にあるのだ。だが、違う。これは幻想であって幸福とは違う。そんな欲望の充足が幸福だと考えるほど、人間は、甘く小さなものではない。われわれは、人間の中でも最も気高い品性を持つ共産主義者であるだけに、それにふさわしい幸福――真の共産主義者の幸福を勝ち取らねばならないのだ。だからと言って、僕はピュウリタンのような禁欲主義者ではない。美しい妻もよろしい、個人的な満足感や、家庭的な団らんが人間にとって必要であるということも否定はしない」

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