心身いやす効能豊かな名湯/朝鮮各地の温泉どころ


草津、別府、下戸…、日本各地には有名な温泉地が多いが、朝鮮各地にも魅力的な温泉地が数多くある。2019年末に竣工し大きな話題を呼んだ平安南道の陽徳温泉文化休養地は、本紙平壌支局でも現地取材で伝えた。総合的な温泉リゾート地として開発された同地をはじめ、現在、朝鮮各地で温泉地の開発事業、温泉探査(源泉調査)が推進されている。朝鮮各地の名湯を紹介する。

2019年にオープンした陽徳温泉文化休養地(平安南道)

全国各地に60カ所

現在、朝鮮各地には約60の温泉地が分布する。

泉質別に見ると、硫黄泉が約10カ所で、ラドン温泉が約20カ所、そのほか塩化物泉、水素炭酸塩泉がある。硫黄泉で有名なのが平安南道陽徳郡の石湯温泉、咸鏡北道明川郡の黄津温泉などで、ラドン温泉は咸鏡北道鏡城郡の鏡城温泉、黄海南道三泉郡の達泉温泉などがある。

地域別に見ると咸鏡北道が最も多く、龍川温泉、温堡温泉、読浦温泉、明川温泉など20カ所以上あり、次いで黄海南道に集中している。平壌から最も近いのは南浦市の龍岡温泉で、治療や休養で訪れた在日同胞も少なくない。

龍川温泉(咸鏡北道)

泉質ごとの効能・効果は非常に高い。

例えば陽徳郡内の温泉地は、皮膚軟化、心筋の収縮および血液循環の促進、消炎および再生の促進、胃液分泌の抑制などに効果がある。中でも石湯温泉は硫黄成分が多くラドンが極端に少ない高温泉(摂氏42度以上の温泉)で古くから皮膚疾患の治療に利用されてきた。石の隙間から温泉が湧くことから歴史的に「トル(石の朝鮮語)湯」(돌탕)と呼ばれ、のちに現在の「石湯」(석탕)という名前になった。

南浦市に位置する龍岡温泉は鉱物含有量が朝鮮で最も多い温泉の一つで、臭素イオンとヨウ素イオンなどの成分が含まれ、血圧を下げる働きや鎮静に効果があることから高血圧症患者の治療に利用されてきた。水温は45~54℃だ。開放感のある大浴場に加え、温泉付客室もありプライベートな滞在を満喫できる。

龍岡温泉(南浦市)

咸鏡北道の鏡城温泉は朝鮮で唯一の「砂湯」だ。砂湯とは、砂を噴き上げながら湯が湧く温泉のこと。鏡城温泉ではこの砂を用いた砂浴を楽しめる。高い治療効果を得られることから「砂温泉」(모래온천)と親しまれている。関節リウマチ、神経系疾患、不妊症などの婦人科系疾患、手術の後遺症、水銀中毒、肥満症などの治療に効果的だ。源泉の湧出口が複数あるため温泉地の規模も大きい。

鏡城温泉の内部(咸鏡北道)

鏡城温泉の外観(咸鏡北道)

平安北道の雲山温泉、朔州温泉、新温温泉、慈江道の昭武温泉は、炭酸水素塩泉、硫黄泉、ラドン温泉で、慢性胃炎をはじめとする胃腸炎や呼吸器疾患、心臓疾患などに効く。とくに雲山温泉は婦人科系疾患に特効があると広く知られている。

江原道の外金剛温泉と咸鏡南道の仁興温泉は、硫黄泉、塩化物泉、水素炭酸塩泉で、血液の循環と新陳代謝の促進に効能があることから慢性胃炎治療や神経痛の治療に良いとされる。

源泉にまつわる伝説も

黄海南道三泉郡達泉里の達泉温泉には古くから伝わる伝説がある。元来、達泉温泉は「チョンダル(종달)温泉」という名前だった。日本語で「ヒバリの温泉」を意味する。

その昔、達泉里の温泉地一帯がまだ沼地だった頃、脚を負傷した一羽のヒバリ(종달새)がここに降り立った。ヒバリは負傷でなかなか空に飛び立つことができなかったが、数日後には元気に羽ばたいていった。不思議に思った住民らが沼地に行ってみると、そこには熱い湯が湧き出ていたという。以来、住民らは「ヒバリが脚を治した温泉」だとして、チョンダル温泉、ヒバリの温泉と親しみを込めて呼び、優れた効能の泉質で心身を癒してきた。歳月は流れ1957年12月、同地を視察した金日成主席が温泉地を整備して人々の治療に活かすべきだとし、その教えに沿って同地に温泉療養所が建設され、全国に知られるようになった。

黄海南道にはほかにも、シラサギが脚を治癒したとして「ペクロ(백로)温泉」(シラサギの温泉)と呼ばれる信川温泉、温泉地一帯に生い茂る梨の木に由来する梨木温泉などがある。道内10余カ所の温泉地はいずれもラドン温泉で、脊髄関節炎、高血圧症、神経痛、卵巣機能不全、慢性胃炎などに効く。

心と体に効く朝鮮各地の名湯を紹介した。新型コロナウイルスが終息したあかつきには、ぜひとも朝鮮の温泉に浸かって自粛中に疲れた心と体を癒してもらいたい。真っ先に訪れたいのはやはり「別天地」とされる最新スポット、陽徳温泉文化休養地だろうか。緑豊かな自然に囲まれた大小20以上の露天風呂、室内風呂、足湯でまさに温泉三昧。心ゆくまで名湯をゆったりと堪能し、風呂上がりに大同江ビールをぐいっと仰げば、このうえない至福の時間となるだろう。

【平壌支局】