〈学生支援緊急給付金問題〉国連・共同書簡の意義と重要性/阿部浩己・明治学院大教授


国際社会の警告、真摯に向き合うべき

国連人権高等弁務官事務所

今年2月19日付で公表された国連人権理事会特別報告者による共同書簡。昨年5月、日本政府が創設した「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下、「給付金」)から、朝鮮大学校を対象外とした措置を「差別に相当」すると強く非難した同書簡の意義と重要性について、国際法が専門の阿部浩己・明治学院大教授に話を聞いた。(まとめ・韓賢珠)

Q. 日本政府に対し共同書簡が送られたことの意義と重要性とは。

A. 今般の書簡は、人種差別撤廃条約、社会権規約、自由権規約など、日本を法的に拘束する国際人権文書に照らし、「給付金」制度が、人種差別に加え、教育権、移民・外国人の権利、少数者の権利を侵害する事態を引き起こしている可能性があるとの懸念を表明するものにほかならない。端的に言って、国際人権法に違反する疑いがあるので、特別報告者たちが注視しているという警告である。

国連人権理事会の特別報告者たちは、「国連人権保障システムの至宝」と称され、国際人権保障のかなめの位置にある。今般の書簡は、特別報告者たちの任務(マンデート)の一つである「通報」の一環であり、国連人権理事会の理事国でもある日本は、国際人権法について最も高度な知見を有する専門家たちが、特別報告者という公的資格の下で示した懸念を誠実に受け止める義務を負う。

Q. 同共同書簡を受け、日本政府は「給付金」と関連する一連の対応について「差別ではない」と回答(4月19日付)した。

A. 第1に、留学生に対し加重的基準を設定していることへの懸念が表明されているのに、この点について正面から応答していない。日本人と留学生の間の異なる取扱いを合理的な理由によって説明できない場合には、当該取扱いは差別と判じられることになる。

第2に、「各種学校の生徒(学生)は対象になっていない」と記すなど、日本政府は中立的な基準を適用しているにすぎないと反論するが、国際人権法上は、基準それ自体が中立的な外観を有していても、その基準が適用される結果として特定の集団に重大な不利益が生じ、かつその不利益を正当化できない場合には、差別と認められる。日本にあって、朝鮮大学校は高等教育機関として制度的にも認められてきているところ、文科省の設定した基準は、高等教育機関の中にあって朝鮮大学校のみを排除する効果を生み出しているに等しく、この事態は、各種学校の認可も受けていない外国大学日本校が本制度の対象に組み入れられた実態に照らしても正当化することができない。日本の管轄の下にあるすべての学生・生徒は、外交的事情といっさいかかわりなく、人種等による差別を受けることなく教育を受ける権利を保障されるという基本的な理解が日本政府の回答には著しく欠けている。

Q. 日本政府に対しては、これまでも国連人権諸システムからの勧告が蓄積されている。

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