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短編小説「道づれ」9/キム・ビョンフン

2021年06月21日 14:17 文化・歴史

「何か、また変わったことでも起きたかね?……またポンプを押そうか?……」

「いいえ、水を替えなければならないんです、おじさん……」

彼女は振り向きもせずそう言うと、胸のポケットから青い表紙の手帳をとりだし、ページをめくってのぞいていたが、手早く閉じるとポケットに納いこんだ。それから風呂敷包みを解いてパガジを手にとった。いつの間にか列車はホームに滑りこんでいた。彼女は踏段の手すりを握って体をのりだすようにして駅のあちこちを見回していたが、列車がほとんど停まりかけたとき私の方を振り返ってにっこり笑った。

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