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〈ワールドオピニオン〉放射能汚染水投棄とオリンピック/ニュー・イースターン・アウトルック

2021年05月21日 12:00 対外・国際

ロシア科学アカデミー東洋問題研究所のオンライン・マガジン「ニュー・イースターン・アウトルック」は4月18日、日本の福島第一原発の放射能汚染水の大洋放流問題に関するコラムを掲載した。以下は要旨。

日本政府は、福島第一原子力発電所敷地内のタンクに溜めている125万トン以上のトリチウム(三重水素)など放射能物質に汚染された水を海洋に投棄すること閣議決定した。

日本政府は、最も人体にとって危険なトリチウムの分離技術をテストしたが、費用が嵩むという理由で実行していない。

日本当局は、福島第一原発から排出される年間放射能レベルは海水で最大0.62マイクロシーベルト、大気で最大1.3マイクロシーベルトであり、これは「最大許容濃度」の概念に含まれると主張している。

しかしながら、福島第一原発事故と放射性物質の環境への侵入の結果、悪影響はすでに顕著である。例えば、2018年、同原発事故によって米国のカリフォルニア産ワインに放射性粒子が含まれていることが判明した。また、少量のヨウ素とセシウムの放射性同位元素が南朝鮮で栽培された野菜や日本沿岸沖で捕れた魚からも見つかった。

専門家によると、海で捕れた魚を食べた場合でもその結果、この放射性物質が一旦人体に摂取されると、外部被爆よりも何倍も有害な内部被爆を引き起こすことになる。

太平洋は広大であり、汚染水が希釈されればタンク内に残る放射性核種の濃度は低下するという日本当局の論理は明らかに誤りである。

そのような環境における放射性核種は、食物連鎖によって最終的に人の体内に取り込まれれば内部被爆を起こすため重大な危険を及ぼすからである。

また、多くの疾病の原因にもなる。日本が放射能汚染水を大洋に放出すれば、日本だけでなく地球上の生命はさらに危険にさらされる。

海流の構造上、事故原発周辺から放射能汚染水が放出されれば、日本の漁場が確実に汚染され、日本の漁師がそこで捕った魚が国際市場に供給される。

そのため、福島県の住民、特に全国漁業協同組合連合会は、政府当局の「安全を保障する公約」にもかかわらず、この海洋投棄に反対している。また、この問題に関する周辺国、とりわけ中国、南朝鮮、ロシアから深い懸念が表明されている。

南朝鮮の公共政策調整局の責任者は、4月12日のブリーフィングで、福島第一原子力発電所から汚染水を海に投棄するという決定は、周辺国の安全と海洋環境を危険にさらすだけでなく、隣国として当然われわれと議論を交わし許可を得るべきだがそうせず、一方的に下したものであると強く批判した。そして、IAEAやWHOなどの国際機関とこの件に関する連携を強化する計画であることを強調した。

中国は4月12日の外務省声明を通じて、日本側の一方的な行動は太平洋の放射能汚染、遺伝性疾患につながるとして断固反対の意志を表明した。

日本のメディアは、東京オリンピックが始まる前から政府の汚染水放出計画について報道してきた。

ここで、日本でのオリンピックの開催と延期の決定と関連して思い起こすべきことがある。東京オリンピック開催が決まった時、当時の安倍首相は事故を起こした福島第一原子力発電所は日本政府によって制御されていると明言し、そうした状況は昨年夏まで保証されているとしてきたことだ。それが、今では放射能汚染水を太平洋に投棄しなければならないというのである。

現在の状況で放射能汚染水を太平洋に投棄すると宣言するのは今日、非常に不幸な選択肢となるであろう。少なくとも、そこに到着するアスリートの健康についての激論につながるからだ。例えば、サーファーは、福島の南250 kmに位置する太平洋の鶴ヶ崎でメダルを競うことを計画しており、他のいくつかの競技は、原子力発電所から60km以内で行われることが想定されていた。

東京オリンピックはコロナパンデミックのため、1年延期となった。ところが、共同通信が最近実施した世論調査によると、ほとんどの日本国民は2021年の開催に反対しており、39%がオリンピック中止に賛成し、33%が延期に賛成した。世界中から大勢のアスリートがやってくるのを前向きに受け止めると答えたのはわずか24.5%に過ぎなかった。

こうした状況の中、菅政権は国民のムードを窺いながら、「メンツを失うことなく」オリンピック中止の客観的理由を見つけようとしている。また、英国紙「ザ・タイムズ」が報じたように、日本政府はパンデミックを理由にそれとなく今年の東京オリンピック中止決定の方向に傾いているが、その代わりに32年のオリンピック開催の権利を主張するつもりのようだ。

オリンピック中止決定が下されようとしているため、汚染水放出の決定はもはや政府首脳陣の関心事ではなくなりつつあるようだ。

 しかし、別の問題が残っている。これらの2つの決定が下された後、日本人自身、東京オリンピック選手、そして国際社会は現在の日本政府をどう記憶するだろうかということである。

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