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〈子どもたちにナルゲを1〉「ナルゲ」作り上げた初期の講師たち

2021年05月15日 09:00 主要ニュース 民族教育

アイデンティティ伝えたい

2008年に始まったインターネットウリマル教室「ナルゲ」では、開始当初から現在まで朝鮮大学校の学生たちが講師を務めている。講師たちは大学生活と両立しながら、週に一度、パソコンの画面を通じて受講生たちに授業を行う。

受講生たちが暮らすのは、岩手、奈良、鹿児島などさまざま。朝鮮学校に通えない、もしくは朝鮮学校がない地域の子どもたちにとって、週に一度の「ナルゲ」は自身のルーツに触れられる唯一の時間ともいえる。

開始当初に講師を務めたのは、将来教員を目指す学生たち10人だった。

康悠仙さん(33、埼玉初中講師、文学歴史学部卒)もそのうちの1人だ。「朝鮮学校に通えない子どもたちにウリマル(朝鮮語)を教えてあげることに魅力を感じた」のをきっかけに、講師を務めることになる。

当時、「ナルゲ」専用の教材や授業計画などはなく、すべて自ら作る必要があった。康さんをはじめとする講師たちは、朝鮮学校で使われている編入生用の教科書「ウリ」(学友書房)の内容を基に授業を準備。授業が終わると次の授業計画を討議し、必要な資料は受講生の家にファクスで送るルーティーンをこなした。

受講生の年齢は7歳から15歳までと幅広いため、授業計画も対象に合わせてそれぞれ作ることが求められていた。

「基本的に授業は受講生が学校から帰ってきてから行う。幼く、疲れている状態で授業を受けるため、どうしても子どもたちの集中力が続かない日がある。かれらが楽しくウリマルを学べるよう、工夫を凝らして授業の準備をした」と康さんは話す。

受講生に会い、直接朝鮮語を教える康悠仙さん(写真左上)

康さんは授業で、朝鮮学校で学ぶ歌なども教えながら「楽しい授業」を作る努力を積みかさねた。「ナルゲ」の時間だけでも民族的アイデンティティを感じてもらえるよう、チマ・チョゴリを着て授業を行うなど細かい部分にもこだわった。

当時、康さん含む講師たちの年齢は18歳~22歳。大学生活の傍ら「先生」を務める経験は、多くの苦労を伴った。しかし康さんは、そんな時間までも「楽しかった」と話す。

「子どもたちがウリマルを完全にマスターしてほしいというより、授業を通して民族的アイデンティティに触れ、朝鮮の言葉や文化の魅力を感じて欲しいという気持ちが大きかった」。

子どもたちが一生懸命学ぶ姿を通して自身を奮い立たせたという康さん。今でも受講生とは深い縁でつながっているという。

より良い授業を

講師たちの努力とその後の経験で、開始当初から役割を確立していった「ナルゲ」。しかし浮き上がってきた課題もあった。共通カリキュラムの不足だ。

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