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【寄稿】切り拓かれた民族美術への道筋/古川美佳

2021年04月04日 10:30 主要ニュース 文化 文化・歴史

外国の思想を論ずるとき、外在的な「私」が内在的であることでしかその論者になれないといわれることがある。つまり自らがその思想を生きる本人になろうとすること、一切の偏見を排し直接対象に近づくことによって、その思想への理解がはじまるというのだ。

ワシントンD.C.のアメリカン大学美術館で開催された朝鮮画企画展の開幕式で講演する著者。(写真はムン・ボムガン氏提供、2016年6月18日 Photo by Bruce Gruthrie)

「朝鮮画、おまえは何者だ⁉」との問いかけで始まる「平壌美術(ピョンヤン・アート)—朝鮮画の正体」は、まさにそのようなあり方で貫かれた、美を求める思想的試みと言っても過言ではない。朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の美術をありのままに見抜こうとする著者・文凡綱(ムン・ボムガン)の容易ではない挑戦が、その美学をマグマの炎のように目前に現出してくれたのだ。韓国生まれで米ジョージタウン大学美術科教授の著者は、分断状況下の緊張と不安渦巻く火中に飛び込み現地踏査を重ねただけではなく、朝鮮に対する「汚染された言葉」をかき分け、対象をつかみ取ろうとする透徹した自己省察をやめることはなかった。それは自己との闘いであり、芸術そのものへの問いかけを通してこそ感受できる朝鮮美術との魂の共振である。

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