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NGOが日本政府へ緊急要請/ヘイトクライム対策求め

2021年04月26日 10:40 主要ニュース 民族教育

「何かあってから」では遅い

多文化交流施設「ふれあい館」(神奈川県川崎市)の館長宛てに殺害をほのめかす封書が送られた問題をめぐって、学者や弁護士からなるNGO「外国人人権法連絡会」が23日、日本政府に対しヘイトクライム対策を求める緊急要請を行った。関係者らは3月31日に発表された「止まらぬヘイトクライムを非難、政府に緊急対策を求める声明」と130を超える賛同団体のリストを提出。法務省人権擁護局の担当者が対応した。またこの日、ヘイトクライム被害の当事者である崔江以子さんのほか、超党派からなる「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」所属の国会議員らが同席した。

NGO「外国人人権法連絡会」が23日、日本政府に対しヘイトクライム対策を求める緊急要請を行った。

「ふれあい館」に「ヘイト封書」が届いたのは先月18日。「コロナ入り」と称した菓子の空き袋とともに「死ね」「殺ろ」といった殺害をほのめかすものや「南北朝鮮人は即祖国に帰れ」など複数の差別・侮辱的な言葉が書かれていた。崔さんは同26日、脅迫の疑いで神奈川県警川崎臨港署に告訴状を提出。

提出された声明は事件について「単なる一般の犯罪にとどまらない、差別的動機に基づくヘイトクライムである」と指摘し、これらを放置することで「さらなる差別、暴力、ついにはジェノサイドや戦争につながることは歴史が示しており、決して許してはならない」と、国際人権諸条約に基づき早急に対策を講じるよう強く求めた。

外国人人権連絡会事務局長の師岡康子弁護士は、脅迫電話や訪問など同館に対する止まないヘイト行為について言及し「これ以上の被害を避けるため、被害者が黙らないといけない社会になっている」と深刻なヘイトクライムを前に泣き寝入りせざるを得ない現状があることについて指摘。

そのうえで具体的な対策法が求められると強調しながら「現在のヘイトクライムの深刻さは従来の啓発・教育では間に合わない。政府がそのことをしっかり認識したうえで、担当部署の設置、刑事政策を含めた対策の成立など、被害者が通告しやすい制度を早急に作るべきだ」と立法による対策を訴えた。

会見に同席した崔江以子さんは「職場や家族にまで直接的な被害が及ぶのではないかと、身も心も置き場がない」とやりきれない思いを吐露する。そして2016年にヘイトスピーチ解消法が成立されて以降も後を絶たないヘイト行為について「解消法が成立された時は嬉しかったが、それから5年が経過した。ヘイト行為はどんどん加速していくばかりだ」と現状を危惧した。

これまで数々の差別被害を受けてきた崔さんは、普段から防刃チョッキを着ての生活を送っている。崔さんは「私個人だけでなく、同じ属性を持った在日朝鮮人も同様に恐怖を感じている」と述べながら、何かあってからではなく、事件を未然に防ぐため、日本政府が率先してアピールすることが必要だと話した。

立憲民主党の有田芳生参院議員は、近年崔さんによる国会での証言や「ふれあい館」のある川崎・桜本へ超党派議員が視察を行って以降「崔さんへの攻撃がヒートアップしている。議員としての責任を感じざるを得ない」と話す。そのうえで社会を変えるために、国会議員としての責任を果たしていきたいと話した。

師岡弁護士によると、この日、要請に応じた法務省人権擁護局の総務課長から、当該行為などヘイトクライムは許されるべきではないという旨の発言があった。

川崎・桜本の「ふれあい館」は1988年、在日朝鮮人をはじめとする在日外国人と日本人が、同じ川崎市民として相互にふれあい共生を目指すことを目的として設立された。日本で初となる在日外国人と地元住民との交流施設だ。

同館を巡っては、昨年1月に脅迫文ととれる年賀状や爆破予告の手紙などが送られていた。これと関連し昨年12月、威力業務妨害の罪で川崎市の元職員が懲役1年の実刑判決を受けている。(金紗栄)

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