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〈取材ノート〉更地と化した街に立ち

2021年03月11日 13:51 コラム

東日本大震災から10年を機に訪れた岩手県。大船渡市での取材を終え盛岡への帰路につく途中、総聯本部委員長が陸前高田市に連れて行ってくれた。

太平洋に面する同市では、かつて約2万人の人々が生活を営んでいた。とくに高田松原は、夏には海水浴客でにぎわい、松に囲まれた遊歩道は人びとの憩いの場所となっていた。

しかし、目の前に広がったのは茶色い更地で、道の駅高田公園、「奇跡の一本松」で知られる高田松原津波復興祈念公園、嵩上げされた土にポツリポツリと建物がある他は、ただ「雄大な」土地が広がっているだけだった。どこに何があったのか、もう何も分からない。

10年前のあの日、この地を襲った津波の爪痕はあまりにも無情であった。

更地と化した街に立ち、静かな海から届く風を浴びると、悲しみでも怒りでもない到底形容できない感情が込み上げてきた。そして、今、この地で生きる人びとに思いを馳せる――。

癒えぬ苦しみを受け止めて、被災地で生きる同胞たち。「特別なことは何もない」と淡々と話すその様は、凛としてたくましく見えた。

そんな同胞たちの生を黙々と支えるこの地の活動家たちの後姿は、在日朝鮮人運動の鑑のようだった。

2021年3月11日、美しい人々の姿を心に刻む。

(鳳)

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