エースとして1部昇格に貢献、個人タイトル3冠の活躍/K2・水原FC、安柄俊選手


リーグMVP、得点王、ベスト11に選出

朝鮮代表として国際大会に出場した経験を持つ安柄俊選手(写真・盧琴順)

11月末にシーズンが終了したKリーグ2部で、一際輝きを放った在日同胞選手がいる。水原FCに所属するフォワードの安柄俊選手(30、東京朝高出身)だ。朝鮮代表歴を持つ安選手は、今季の開幕からゴールを量産し、26試合で21得点を記録。首位争いを繰り広げる水原FCをエースとして牽引し、チームを5年ぶりのK1昇格に導いた。

また、リーグのMVP、得点王、ベスト11の個人タイトル3冠を果たした。過去には、梁圭史、安英学、鄭大世などの同胞選手たちがKリーグでプレーしてきたが、リーグMVPに輝いたのは安柄俊選手が初めてだ。

心身両面での成長

東京朝高出身の安選手は、2013年に中央大学からJ1の川崎フロンターレ(2013-15年)に入団。その後、J2のジェフユナイテッド市原・千葉(15年)、ツエーゲン金沢(16年)、ロアッソ熊本(17-18年)でプレーした。朝鮮代表としては、U17、U23、A代表で国際大会を経験した。

大学卒業後はJ1の強豪クラブ、川崎フロンターレに入団した。(C)川崎フロンターレ

Kリーグに初めて挑戦した昨季は、17試合で8ゴールを記録。数字だけを見ば評価に値するが、本人としては満足のいくシーズンとはいかなかった。膝の怪我に悩まされ、シーズン後半戦はほぼ試合に出場できなかったためだ。

「負傷期間はチームが勝てない日々が続き、シーズン終盤に向かうにつれ重要な試合が増えていった。チームメイトたちが奮闘しているのに力になれず、悔しさや情けない気持ちでいっぱいだった」

だからこそ、今季にかける思いは人一倍強かった。これまでのプロ生活では負傷のためシーズン途中で戦線離脱を余儀なくされることが多かったが、今季開幕前にはウェイトトレーニングに多くの時間を割き、フィジカルコンタクトが激しいKリーグでシーズンを通して闘える体を作っていった。

こうして迎えた今季は、開幕からコンディションを維持しながら、飛ぶ鳥を落とす勢いでゴールを量産。左右両足から繰り出されるパワーあふれるシュート、183㌢の長身をいかしたヘディング、軌道を予測しづらい無回転フリーキック、相手ディフェンスラインの裏への抜け出しなど、さまざまな形からネットを揺らし続けた。

過去にないハイパフォーマンスを見せられた要因には、精神的な成長も挙げられる。開幕前、安選手は新たに就任した監督に呼ばれ、試合中のメンタルコントロールがいかに重要かを告げられたという。

「これまでは、試合中に相手からファウルを受けたり、審判のジャッジに納得がいかないとイライラしがちだった。そのことをよく知っていた監督からは、『どんな時でも平然を装い、冷静にプレーすることを心がけろ』と言われた」(安選手)

得点王レースをリードする中でメディアやファンから注目が注がれ、試合を重ねるごとに相手からのマークが激しくなっていった。しかし安選手は、自身のペースを崩すことなく「チームの勝利を最優先に」考え、献身的にプレーし続けた。

同胞選手として初めてKリーグでリーグMVP、得点王、ベスト11の個人タイトル3冠を果たした(写真・本人提供)

エースの活躍によって水原FCはレギュラーシーズンを2位で終え、1部昇格をかけたプレーオフに進出。水原FCは引き分け以上で昇格が決まる試合で、終盤まで0-1と劣勢に立たされた。しかし、後半アディショナルタイム10分にPKを獲得。重要な局面でキッカーを任されたのは、安選手だった。

安選手はプレッシャーのかかる中で落ち着いてPKを沈め、1部昇格の立役者に。翌日に行われたK2の年間授賞式では、リーグの監督10人中8人、主将10人中6人、メディア記者75人中57人の投票を受け、2位に圧倒的な差をつけてMVPを獲得した。

自分の活躍によって

安選手に今季を自己採点してもらったところ、こんな答えが返ってきた。

「点数をつけるなら『85点』。ウリハッキョならギリギリ最優等生かな(笑)。個人的にはこれ以上望むことのできない結果を残せたけど、チームが不調だった試合では決定的な働きを見せられなかった。そういう面で見ると、自分に満点はあげられない」

朝鮮代表として南朝鮮代表と対戦したこともある安柄俊選手(写真・盧琴順)

「在日同胞3世」「朝鮮学校出身」「朝鮮代表経験者」という経歴を持つ安選手には、過去にKリーグでプレーしてきた同胞選手たちと同様、各方面から注目が注がれてきた。Jリーグでプレーしていた頃は自身のバックグラウンドについて「あまり深く考えることはなかった」と安選手。だが、現在は「自分が活躍することで『在日朝鮮人』という存在を知ってもらい、朝鮮に対する人々の見方も少なからず変えられるんだ」と実感している。

より高いレベルでプレーするであろう来季に向けては、「自分がどこまで通用するか楽しみだ」と期待感を抱いている。

「まだまだ自分のプレーに改善の余地がある。来季は技術的にも、個人戦術的にも、一回り成長した姿を見せたい。もしまた朝鮮代表に選ばれることがあれば、すごく光栄だ。その時は、国を背負って全力でプレーしたい」

(李永徳)