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法整備で喫煙率減少へ/朝鮮の禁煙事情

2020年11月20日 07:30 主要ニュース 共和国

朝鮮では近年、禁煙マークのステッカーを貼っている飲食店や商業施設がめっきり増えた。喫煙規制や意識喚起などの禁煙キャンペーンが積極的に展開される中、4日の最高人民会議常任委員会第14期第11回総会では禁煙法が採択された。法整備により今後、禁煙ブームはいっそう拡大していくとみられる。(金淑美)

段階的に規制強化

喫煙の規制が世界的なすう勢となって久しい。日本でも改正健康増進法の全面施行により、今年4月から屋内原則禁煙の新たなルールが設けられた。

今回、朝鮮で新たに採択された「朝鮮民主主義人民共和国禁煙法」は、31の条文で構成され、国家禁煙政策の要求に即してタバコの生産および販売、喫煙に対する法的・社会的統制を強化して人民の生命と健康を保護し、より文化的な生活環境を整える上ですべての機関、団体、公民が守るべき準則が規制されている。

また、政治・思想教育の場所、劇場、映画館のような公共の場、幼児の保育・教育機関、教育機関、医療保健施設、商業、給養・便益サービス施設、公共運輸手段をはじめ、禁煙の場所などが制定され、喫煙秩序に違反した行為に対する当該の処罰内容などが明らかになっている。

禁煙を促す法整備は、近年、国内で積極的に取り組んできた禁煙キャンペーンをいっそう後押しするものとなる。

喫煙の弊害を訴えるポスター(2018年6月撮影)

朝鮮では2005年にタバコ統制法が制定された。以後、4回にわたって改正され、19年の法改正では、新しい商品名のタバコの生産を禁止したほか、外国製タバコの輸入を制限、電子タバコの使用を禁止するなど、喫煙率を引き下げるため、段階的に規制を強化してきた。

朝鮮は2005年4月にWHOタバコ統制枠組み条約(03年採択)に加入。毎年、世界禁煙デー(5月31日)に際してWHOなどの国際機関との連携の下、世界の禁煙運動のすう勢に即した様々なイベントを行っている。

世界禁煙デーに際した討論会(19年6月、朝鮮の今日)

禁煙希望者が増加

禁煙運動において重要な役割を担っているのが、2010年に開設された禁煙研究普及所だ。禁煙運動のための専門の活動機関で、喫煙被害を減らすための宣伝活動をはじめ、喫煙による健康影響に対する研究、禁煙製品開発など、人々をタバコによる健康被害から守るための様々な活動を行っている。平壌市西城区域に禁煙研究普及所が、各道に傘下分所が整備されている。

同所では、禁煙希望者らへの相談サービスを行っており、臨床心理士による健康状態の測定、禁煙方法のアドバイスなどで、来所者の禁煙支援に取り組んでいる。

禁煙研究普及所で実施している喫煙者の健康診断(2018年6月撮影)

2018年6月の取材時で、相談希望者は多い日で1日に100人を超えていた。今年5月に朝鮮中央通信が伝えたところによれば「普及所を訪れる禁煙希望者が引き続き増えている」(リ・ヒギョン所長)という。

禁煙相談ではまず、来所者がいつから、どのようなタバコを1日にどれだけ喫煙しているのかを把握した上で、専用の分析機器を用いてニコチン含有量をはじめとする全般的な健康状態をチェック。36項目の分析結果に基づいて、個々人に効果的な禁煙方法、禁煙後にあらわれる症状とその克服方法を紹介してくれる。すべて無償で受けられるサービスだ。

臨床心理士のキム・オクリムさんによれば、相談者は20〜60歳の男性たちだ。禁煙を希望する理由は「喫煙により健康を害した」「身体からタバコの臭いを消したい」など様々で、中には「妻のため」と禁煙を決心する人もいるという。

同所では、今回新たに制定された禁煙法に基づいて、法律を積極的に解説・宣伝する活動、喫煙禁止場所と喫煙所にそれぞれ掲示する禁煙マークや喫煙による健康被害を警告する各種ポスターなどの設置を急いでいる。

また国家イントラネット網にホームページを開設し、禁煙希望者のための資料提供、全国的な遠隔禁煙サービスシステム構築にも取り組んでいる。

世界の喫煙状況

2019年の世界保健機関(WHO)の報告書によれば、タバコの規制措置を導入した国に住んでいる人は世界で50億人以上。この数は10年前の4倍以上だ。また、WHOに加盟する186カ国のうち公共の場すべてを屋内全面禁煙としている国は55カ国に及ぶ。

女性の喫煙者が着実に減少してきたことで、2000年に世界で13億9700万人だった喫煙者数は徐々に減少し、2018年には13億3700万人となった。昨年末にはWHOが統計史上初めて男性の喫煙者数が減少に転じたと発表。タバコ依存を撲滅する取り組みにおける「大きな転換点」と評価した。

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