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露呈した加害者意識の欠如/ひろしまタイムラインを考える

2020年10月25日 18:10 主要ニュース 権利

総聯広島県本部の人権救済申し立てを受けて

戦争を経験した人々の体験を届けることで「75年前への細やかな想像を広げる」(公式HPより)―。

戦後75年を迎える今年、NHK広島放送局が先述のコンセプトで企画し3月から展開する「ひろしまタイムライン」。被爆者ら3人の日記をもとに、高校生や公務員ら11人が本人になりきり、戦時中の日常や、米軍による原爆投下で起きた混乱などについて連日ツイートを続けている。開始当初は注目度が高かった同企画だが、植民地主義の差別意識に基づく朝鮮人への差別投稿が繰り返し行われ、また投稿内容も信ぴょう性にかけるものが多くあることから、批判が噴出していた。

発端と当事者不在の「謝罪」

近年、官民一体となった歴史修正の流れは、日本の加害史に蓋をし、若い世代の戦争観や歴史観の歪みをもたらすうえで、深刻な原因の一つとなっている。

そんななかで起きた今回のできごとが、いかに重大な問題であるか。

発端となったのは、今を生きる「10代が想像を膨らませ」(当該アカウントより)伝えた「シュン」のアカウントからツイートされたもの。同アカウントは、75年前に中学1年生だった新井俊一郎さん(88)の日記を主に参考にしていた。

20年8月20日の投稿には、1945年同日の投稿として植民地から解放された朝鮮人が列車の窓をたたき割り、暴力的に日本人を外に投げ出すようすが書かれており、これに対し「誰も抵抗できない。悔しい…!」などと心理をつづっている。また先立って投稿された6月16日の内容には、「シュン」が広島駅から軍事施設と思われる場所に行きつき見かけた人々に対し、朝鮮人であることを前提にして、自身の怒りやもどかしさがつづられた。

こういった計5つの差別や偏見をあおるツイートに対し、批判は国内外に広まり、投稿の削除を求める運動に発展。発起人であるカナダの平和団体「ピースフィロソフィー・センター」の乗松聡子代表(55)のブログには賛同を表明する数々の識者らが名を連ね、10月5日には同団体からツイートの削除を求める抗議文がNHK広島放送局へ手渡された。

一方、「シュン」の投稿のもとになった新井俊一郎さんの日記は8月17日から27日まで記述がない。放送局側は「日記だけでなく手記や証言も参考として投稿を作っている」と立場を示したが、新井さんは当初の約束と異なるとして同放送局へ抗議の意を示している。

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