〈取材ノート〉未来を描くための存在


先日、短期出張で愛知に出向いた。目的は2020年初となる金剛山歌劇団の公演取材。

今年は、コロナによる影響を直に受けていた歌劇団にとって、いつにも増して貴重な公演であることをわかっていただけに、公演当日だけでなく、その前後で密着し団員たちの心境を聞きたいと考えていた。

公演前日の夕方から仕込みをすると聞き、写真記者とともに会場に向かうと、ちょうど団員たちが大型バスから降りて搬入口の前で待機していた。

「はるばるですか?本当にコマッスンミダ」「今回もよろしく頼みますね」

筆者たちに気づいた団員たちが、そう声をかけてくれたとき、歌劇団を取材してもうどれくらい経つだろうという思いが、ふと頭をよぎった。思えば、2015年のアンサンブル公演「100年の夢」東京公演が初めての取材。当時出会った新人団員は、今ではもう後輩たちを指導する中堅だ。

今年舞台裏を取材しながら、とりわけ強く印象に残ったのは、公演に向けた思いを涙ながらに語ってくれた歌劇団のメインMC・金明姫さんの言葉。

「いつも頭をよぎるのは朝鮮の文化芸術を愛する学生たちの姿。そのような学生たちが自分たちの未来を思い描くためにも、歌劇団の存在は不可欠だと思っている」。

目先のステージを成功させることでなく、自分たちの栄光のためでもなく、子どもたちが未来を描くための存在―。

分野は違えど同じ使命や役割を担っていることに、身の引き締まる思いだった。

(賢)