〈幼保無償化〉施行から1年、基本理念に立ち返り法改正を/広島弁護士会が会長声明


幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校の幼児教育・保育施設が対象外となっていることと関連し14日、広島弁護士会が会長声明を発表した。

声明では、広島県下にある広島朝鮮初中高級学校付属幼稚班や広島インターナショナルスクールに言及しながら、これら各種学校認可の幼児教育・保育施設が制度の対象外とされていることを強く非難。そのうえで「外国人学校は、『各種学校』としての認可を受け、外国にルーツがある子どもたちの教育を受ける権利(憲法26条1項、子どもの権利条約28条)、そして母語や自己のルーツに関わる文化を享有する権利(同30条)の保障に大きく貢献している」と指摘した。

さらに、外国にルーツのある子どもたちにとって「ルーツの国の言語、文化に基づく幼児教育・保育を受けられる環境は、言語的な発達やアイデンティティを育むうえでかけがえのないもの」だとしながら「その環境を保障することこそが、憲法及び子どもの権利条約上の要請といえる」と、昨年10月の制度施行から1年が経ついま、依然として外国人学校を対象外としている日本政府の対応を非難した。

また声明では、地方自治体独自の支援の必要性についても指摘したうえで、▼国に対し、支援法の基本理念に立ち返り、外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化の対象とする法改正を行うこと、▼広島県及び広島市に対し、「各種学校」として認可された広島朝鮮初中高級学校付属幼稚班および広島インターナショナルスクールに通う子どもに、積極的な財政支援を実施すること―を求めた。

昨年12月20日、日弁連が「外国人学校の幼児教育・保育施設を無償化措置の対象とすることを求める会長声明」を発表して以降、幼保無償化と関連しては各地の弁護士会から制度の是正を求める声明が続いている。

広島弁護士会による今回の声明発表は、埼玉弁護士会(2月12日)、大阪弁護士会(2月13日)、第二東京弁護士会(3月17日)、京都弁護士会(2月19日)、福岡県弁護士会(7月2日)、茨城県弁護士会(8月7日)につぐ7例目となった。

(韓賢珠)

以下、声明全文。

 

「幼保無償化」から外国人学校の幼児教育・保育施設を除外しないことを求める会長声明

2020年10月14日

広島弁護士会 会長 足立 修一

 

第1 声明の趣旨

1 国は、「各種学校」として認可された外国人学校の幼児教育・保育施設についても、幼児教育・保育の無償化制度の対象とすべきである。

2 広島県及び広島市は、国が幼保無償化制度の対象に「各種学校」を含めるまでの間は、「各種学校」として認可された外国人学校の幼児教育・保育施設に通う子どもに、積極的な財政支援を実施すべきである。

第2 声明の理由

1 子ども・子育て支援法改正法が、2019年10月1日から施行され、幼児教育・保育の無償化(以下「幼保無償化」という。)が始まってから1年が経過した。

この制度は,「全ての子どもが健やかに成長するように支援する」ことを基本理念としており(同法2条2項)、認可幼稚園、認可保育園、認定こども園のほか、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業も幼保無償化の対象とされている(子ども・子育て支援法7条10項、30条の2以下等)。

ところが、学校教育法上、「各種学校」として認可された外国人学校の幼児教育・保育施設は、幼保無償化の適用対象から除外されており、広島県下では、広島朝鮮初中高級学校付属幼稚班、広島インターナショナルスクールが幼保無償化制度の対象外とされている。

「各種学校」である外国人学校が無償化の対象とならない理由について、政府は、「各種学校」である外国人学校の幼児教育・保育施設は、「幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とはならない」としている(「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」2018年12月28日関係閣僚合意。以下「閣僚合意」という。)。

しかしながら、外国人学校は、「各種学校」としての認可を受け、外国にルーツがある子どもたちの教育を受ける権利(憲法26条1項、子どもの権利条約28条)、そして母語や自己のルーツに関わる文化を享有する権利(同30条)の保障に大きく貢献している。

ルーツの国の言語、文化に基づく幼児教育・保育を受けられる環境は、日本で暮らす外国にルーツのある子どもにとって、言語的な発達やアイデンティティを育むうえでかけがえのないものである。その環境を保障することこそが、憲法及び子どもの権利条約上の要請といえる。

また、「全ての子どもが健やかに成長するように支援する」という支援法の基本理念に照らすならば,幼児教育・保育施設としての実態が認められるのであれば、外国人学校であっても幼保無償化の対象とするのが支援法の趣旨に適う。

したがって、幼児教育・保育施設として一定水準にある「各種学校」として認可された外国人学校を、一律に幼保無償化の対象から除外することは、憲法14条、国際人権(自由権)規約2条1項、同(社会権)規約2条2項、人種差別撤廃条約、並びに教育における機会の平等、財政的援助、文化的アイデンティティや居住国及び出身国の国民的価値の尊重を保障する子どもの権利条約(2条1項、28条、29条)に反するおそれが高いと考える。

以上から、当会は、国に対して、支援法の基本理念に立ち返り、外国人学校の幼児教育・保育施設を幼保無償化の対象とする法改正を行うよう求める。

2 幼保無償化のための地方自治体独自の支援について、上記閣僚合意は、「6.その他(幼児教育の無償化に伴う取組)」において、「地方自治体によっては、既に独自の取り組みにより無償化や負担軽減を行っているところがある。今般の無償化が、こうした自治体独自の取組と相まって子育て支援の充実につながるようにすることが求められる。このため、今般の無償化により自治体独自の取組の財源を、地域における子育て支援の更なる充実や次世代へつけ回し軽減等に活用することが重要である。」と指摘している。

のみならず、内閣府が自治体向けに作成した資料においても、認可を受けていないが、地域や保護者のニーズに応えて教育活動を行っている、いわゆる幼児教育類似施設について、「国としては、その方策の一つとして、今般の無償化の対象とならない施設についても、地域の教育機械の確保に重要な役割を果たすと認められるものであれば、支援の充実を積極的に検討いただきたいと考えています。地域や保護者のニーズに応える幼児教育類似施設であって、自治体が積極的に支援を行うようなものについては、国としても、地方と協力してどのような支援ができるか検討してまいります。」と説明し、地域的な取り組みが重要であること、それについて国も協力を推進することを繰り返し表明している。

そして、前述した憲法、国際人権規約、子どもの権利条約及び人種差別撤廃条約の各規定並びに子ども・子育て支援法の目的及び基本理念に鑑みれば、地方自治体には、国が幼保無償化制度の対象に「各種学校」を含めるまでの間は、自ら積極的な財政的支援を実施することが求められるものといえる。

実際にも、国内の地方自治体の中には、例えば埼玉県志木市、東京都国立市等、無償化制度の対象外とされている幼児教育類似施設や外国人学校の幼稚部に対し、独自の支援を行っているところもある。

よって、当会は、広島県及び広島市に対しても、「各種学校」として認可された外国人学校の幼児教育・保育施設である広島朝鮮初中高級学校付属幼稚班及び広島インターナショナルスクールに通う子どもに、積極的な財政支援を実施することを求める。

以上