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〈ものがたりの中の女性たち 36〉「私を見て! 私を見て!!」/少女某

2020年08月03日 10:33 主要ニュース 歴史

あらすじ

申砬は朝鮮王朝時代の武将である。ある日、狩りのさなか山で道に迷う。明かりを頼りにたどり着いた崖の際に建つ大きな屋敷には、少女が一人で住んでいる。事情を聞くと、夜な夜な怪異が起こり家族も使用人も皆死んでしまったという。申砬は一晩泊めてもらう代わりに、怪異を解決することを約束する。夜、静かに座っていると、どこからともなく霧のようなものが部屋に漂い、すぐ出て行ったので後を追ってみると崩れた塀の辺りで消える。

部屋に戻ると、今度は死体のようなものが現れるも、無視していると出て行き梁の辺りで消える。翌朝、塀の根元を掘ると白い鶏が横たわり、それを剣で突き刺し薪に放り込むとたちまちのうちに消える。続いて梁を探ってみると巨大な百足が現れ、一刀両断にして火に放り込むと霧のように消える。虫の息で気絶していた少女を助け起こし、怪異の原因を告げた申砬は意気揚々と引き上げようとする。すると少女は彼に取りすがり、婢でも妾でも何でもいいので連れて行ってほしいと懇願する。

ところが申砬は自分には妻子がいると言い捨てると、泣き叫ぶ少女を一顧だにせず去る。「私を見て!」と叫ぶ少女の悲痛な声に、思わず振り返った申砬は、凄惨な場面を見ることになる。絶望した少女は屋敷に火をつけ、崖から飛び降りる。

その後、壬申倭乱が起こり、申砬は将軍として戦場に赴く。敵将までがあきれる中、鳥嶺(チョリョン)という要地を捨て弾琴臺(タングムデ)に背水の陣を敷くが、倭軍に大敗し追い詰められ崖から身を投げる。実は戦乱の間中ずっと少女の霊が、申砬の耳元で繰り返し囁いたという。弾琴臺に陣を敷けば必ず勝てると…。


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