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〈それぞれの四季〉さて、何がしたいの?/李勇燦

2020年06月22日 13:06 コラム

ドイツで研究を始めて丸2年が経った。当初は考え方の違いに戸惑うことが多かった。例えば、困ったことがあって事務室を訪ねたとき。「それは私の仕事じゃないから助けることができないわ。ごめんなさい」。こうした対応が不親切だと感じた。

また、初めて扱う実験装置に関して技術員に話を聞きに行ったときのこと。「この装置を初めて使うんです」「そうなのね。で、あなたは何がしたいの?」。単刀直入に聞かれて返答に困ってしまった。「何がしたいというと?」「装置の測定条件や希望の日時を詳しく教えて。あなたの要望にそって実験を組みたいので」「初めてなので良く分からないんです」「なら一から考えましょう。実験の目的は?過去のデータはあるの?…」

研究でも日常でも、ストレートに要望を尋ねられることが多いのだ。日本では、遠回しに相手の考えを伺うのが親切な作法といえるが、ドイツでは、二者択一の質問で物事をハッキリさせていく。相手の考えを推し測るのも重要だが、明確な言葉にすることで物事がうまく進むことが多い。

これを知ってから、冒頭の例にも対応できるようになった。「…じゃあ、誰に聞けばいいか知っていますか?」「それならこの部署が知っているかも」「ありがとう。ダンケ!」。自分は何がしたいのか。そのために相手ができることは何か。小さなことでも自らの意思を大切にし、研究活動を続けていきたい。

(ドイツ在住、博士研究員)

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