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〈特集・知って活用しよう、公的支援策〉解説・雇用調整助成金の活用法/朴東浩

2020年05月18日 12:00 主要ニュース

今回は、社会保険労務士の朴東浩さんに、事業主への雇用調整助成金の活用法について、解説していただく。

現在私のもとにも多くのご相談が寄せられています。同胞商工人が多く従事する飲食業や遊技業は勿論、イベント会社やサッカースクール等、その業種は多岐にわたります。

どの事業主の方も今の困難を会社として乗り切ることは勿論、事業活動を共にしてきた従業員の方々の生活を守りたい、困難の後にはまた一緒に仕事をしたいという思いに変わりはありません。

雇用調整助成金は、制度上会社にお金が残るものではありません。むしろ一旦会社が全てを負担し、その後要件が整えば負担した一部が戻ってくる助成金制度です。よって決して当面の資金繰りとして考えてはいけません。大切な従業員の方々の雇用を守りつつ、いつか収束するコロナウイルス後を見越しつつ活用すべき助成金と言えます。

活用にあたって、事業主の方が気になるであろう点をいくつかご紹介します。

表:厚生労働省HPより

図:厚生労働省HPより

1. 休業手当の支給率を定める

現在の「コロナ特例」により、雇用調整助成金の助成率は大幅に引き上げられています。しかし本稿執筆時点(5月11日)においては、一日の上限額は引き続き8330円と定められており、これ以上どれだけ休業手当を支給しても、事業主が受給できる助成金額は増えません。

勿論、大切な従業員のために何としても100%支給するということであれば、是非支給してあげていただきたいところですが、それが難しいようであれば試算をしながら休業手当の支給率を定めましょう。助成額が上限を超えないギリギリの額で支給率を定めると事業主の負担が減ることとなります。

現在、雇用調整助成金の支給申請書自体で自動計算ができるようになっていますので、利用してみてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000627535.xlsx

2. 法定調書を揃える

当たり前の話ですが国からお金をもらう以上、労働基準法をはじめとする法律に則った帳簿の準備や割増賃金等の支払い、労働保険の届出等が正確にできていなければなりません。

しかし現状でこれらの帳簿が無い場合でも、今回の「コロナ特例」では助成金を受給できる可能性があります。緊急対応期間において賃金台帳は既存の給与明細でも、出勤簿は既存のタイムカード等でも申請を受け付けてくれることとなりました。また、当然本来好ましいことではありませんが、労働保険料の未納や労働関係法令違反の不支給要件に該当していたとしても、今回は特例的に助成金の利用が可能とされました。

万が一これらに当てはまる会社では、今後は正確な処理を心がけることを前提に助成金の利用を検討していただければと思います。

3. 今後について

われわれ社労士も毎日のように更新される情報に翻弄されている最中、本稿執筆中のまさにその日に総理大臣が「上限額(8330円)の増額」を検討する方針に触れるなど、雇用調整助成金に関するドタバタ劇はまだまだ続きそうです。最終的には上限額の増額や特例期間の更なる延長も当然予想されるところであります。

一体いつ申請すれば良いのか悩ましいところではありますが、まずは今ある要件の下で申請し、その後増額が望める改正があったならばそれに沿った再申請をするしかないかも知れません。

いずれにせよ、常に最新の情報をチェックしつつ、最寄りの朝鮮商工会や社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

(社会保険労務士)

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