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〈学生支援緊急給付金問題〉平等でない支援、不必要な要件に抗議/朝大生など外国ルーツの学生らが記者会見

29日、マイノリティの人権保障と反差別に取り組むNGOおよび外国人学生たちが都内で記者会見を開いた。

「学びの継続」をうたい日本政府が創設した「学生支援緊急給付金」。その対象からまたもや外国人はふるい落とされようとしている。

新型コロナ感染拡大を受け、日本政府は、困窮する学生への支援策として19日、「学生支援緊急給付金」を打ち出した。給付要件として、海外からの外国人留学生に対してのみ「成績優秀者」という枠が設けられているほか、約370万人に及ぶ学生すべてが対象ではなく、その対象には43万人が予定されている。これと関連し29日、マイノリティの人権保障と反差別に取り組むNGOおよび外国人学生たちが都内で記者会見を開き、留学生にのみ課された成績要件等の撤廃と、朝鮮大学校など外国人学校に通う学生もすべて対象に含めるよう強く求めた。主催した5つのNGO団体らは、25日に同支援策を非難する声明を発表していた。

会見には、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)の鈴木江理子副代表理事(国士舘大学教授)、外国人人権法連絡会の田中宏共同代表(一橋大学名誉教授)、師岡康子事務局長(弁護士)のほか、朝大生を含む外国ルーツの学生、留学生ら3人が同席した。

会見に先立ち、オンライン署名サイトを通じ集められた5万以上の署名が文科省担当者へ手渡された。

冒頭、鈴木江理子副代表理事は、文部科学省に対し団体関係者と学生らが同日15時半から行った要請について報告した。

鈴木副代表理事は、文科省が事前に見積もった給付対象者43万人という数そのものが少なすぎると指摘しながら、その根拠として(1)既存の支援制度の利用状況を要件(給付要件6)にしていること、(2)申請において留学生に対してのみ成績要件を設けていること、(3)各種学校などを対象外にしているといった3点に言及。そのうえで、経済的な困難に直面しているのはすべての学生が同様であるとして、要請の場で(1)給付要件6の削除、(2)留学生に対する成績要件の撤廃、(3)朝鮮大学校など各種学校も対象に含めるよう求めたと明らかにした。

要請に対し、文科省の担当者は「43万人というのは現時点の枠」であり追加支援について次回の予算で検討する旨を述べた一方、朝大など各種学校を対象とするか否かに関しては「十分な回答はなかった」。

オンライン署名数は今現在も引き続き増えており、29日時点で5万6800におよんでいる。

鈴木副代表理事は「文科省の調査(「学生の中途退学や休学等の状況について」・2014)によると、2012年度の時点で年間に8万人近い中退者が出ていてその2割が経済的理由によるものだ。コロナの状況になくとも経済的理由で学業を諦めなくてはならない学生がそれほど居た。増してや今のコロナの影響で、学生たちは学びたいと思いながらも自らの思いを実現できず学校を後にしなければならない状況にある。やっと出てきた政府からの支援が十分でないというのはおかしい」と異議を唱えた。

つづいて発言した師岡康子事務局長は、国際人権基準に即して、留学生にのみ成績要件を設けることや、朝鮮大学校だけを外すのは「人種差別撤廃条約などに反する公的差別」だと指摘。師岡事務局長は今年4月以降、国連事務総長や人権高等弁務官などが「新型コロナの被害において誰一人取り残さない」「とりわけ社会的なマイノリティに対しては救済措置をとるべき」と新型コロナと人権という側面で発言したことに触れ「皆がコロナの被害にあっているとき、あえて朝鮮学校だけを外すのは国際的な要請や日本が加盟している人権条約に違反している。国際的な批判に耐えられるものではない」と日本政府の政策を非難した。

発言するダリマ・タマンさん

ネパール出身で17歳に来日、現在、上智大学大学院に通うダリマ・タマンさん(23)は「心が疲れてきた」とつらい胸の内を吐露した。ダリマ・タマンさんは「ネパールからきた留学生は勉強のためではなく出稼ぎにきたと批判されることも多いが、私たちは勉強するために働いている。留学生は週28時間しか働くことが認められていないので、もともとギリギリの生活だったが、いまは勉強が続けられなくなるのが不安だ」とし「留学生だけが成績優秀者でないと申請できないのは差別だ。同じ大学に通う留学生と日本人のあいだに大きな壁をつくるのはおかしい」と訴えた。

朝大で学ぶ崔さん

在日4世で、朝鮮大学校政治経済学部で学ぶ崔さん(19)は「朝鮮学校は高校無償化制度から除外され、自治体の補助金も停止された。新型コロナ感染拡大の影響で、保護者や学生の収入が減るなか、兄妹がいる家庭では2重3重の負担があり学びを続けられるのか、先の見えない不安が押し寄せている」と話す。

この日配布された、同大国際交流委員会がまとめた資料によると、5月に全校生(今年度新入生を除く)を対象に実施した調査の結果、在学生に占めるアルバイトをする学生の比率は71.8%、そのうち学費のすべてまたは多くの部分をアルバイト収入で賄う学生の比率は28.9%で、対全校生比約20%を占める。また新型コロナ感染拡大により収入が著しく減少した学生の比率はアルバイトをする学生の94%にのぼるなど、困窮を極める学生が多くいることが確認できる。

崔さんは「給付金の対象から外されたことに、憤りもそうだが『またか』というやるせない気持ちが大きい。コロナ危機におびえながら支援を待っている学生がたくさんいる。今日、世界での共通の敵は民族や文化ではなくウイルスではないのか」と訴え、すべての高等教育機関で学ぶ学生を対象に含むよう、日本政府に対し再考を求めた。

支援制度の早急な是正を訴えた田中宏共同代表

最後に発言した田中宏共同代表は「新しく差別はつくらせてはならない」と、朝鮮学校を除外した高校無償化をはじめ、新たな制度をつくるたびに、新たな差別を生んでいると語気を強めた。

田中共同代表は「1998年、京都大学大学院が各種学校の朝鮮大学校卒業生の受験を認め、合格者が出た。それがきっかけとなり、一条校や各種学校でない外国大学日本校(米テンプル大学日本校、ロシア極東大学函館校、天津中医薬大学日本校、北京語言大東京校、上海大学東京校)の卒業生に対しても、日本の大学入学への道が開かれた。今回の支援で、政府は、この外国大学日本校について追加で対象に含める措置をとったが朝鮮大学校は対象外のままだ。また社会福祉士、介護福祉士の受験資格においても、2012年には大学入学資格を有するもので修業年限4年以上の各種学校卒業生が試験を受けられるようになった。これらは、しっかりと認めていこうと思えば、いくらでもできるということを意味する」としたうえで「貧しきを憂えず等しからざるをを憂う社会であってほしい」と語った。

会見前には、オンライン署名サイトを通じ集められた5万以上に及ぶ署名「外国人学生に日本人学生と同じ基準で現金給付をして下さい!」(29日現在で署名数は5万6800にのぼる。)が、文科省の担当者へ手渡された。

同給付金に対しては、26日に「留学生の差別的取り扱いに反対し、すべての困窮学生に届く支援を要望する大学教員声明」が発表され、38人の大学教員たちが呼びかけ人となり、成績要件の撤廃などを求める署名(6月9日締切)をスタートさせるなど、各方面から批判が殺到している。

(韓賢珠)

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