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感染拡大であらわになった米国の脆弱性

2020年05月21日 13:11 主要ニュース 対外・国際

世界を覆うコロナ災禍の最大被害国

国境と大陸を横断して広がった新型コロナウイルス感染症は被害を受けた国々で「第2次世界大戦後、国家が直面した最大の挑戦」(ドイツ・メルケル首相)と見なされているが、世界的な災禍に直面して最大の打撃を被っているのは「唯一超大国」を自称してきた米国である。最大の感染者数、死亡者数は軍事優先、経済重視の論理で人間の生命安全保障に目を背けてきた米国の国家制度、社会秩序の欠陥と脆弱さを示す指標だ。

拝金主義がはびこる社会

 米国で感染者、死亡者が多かった要因は、営利中心の医療システムと極端な貧富の格差にあるというのが識者の一般的な見解だ。

すべての国民を網羅する公的な医療保健制度がない米国では、保険と治療は民間会社に頼る以外に術がない。

米国では保険会社が病院を所有するか、間接的な方法でその運営を統制している。非常事態に備えた予備の病床確保はなく、酸素呼吸器も準備されていない。人々は莫大な保険料を出しても治療を受ける度に多額の現金を負担しなければならないし、貧困層は最初からこのような医療システムから排除されている。

米国では新型コロナウイルス感染拡大で非常事態が宣言された。(連合ニュース)

新型コロナウイルス感染が広がった時も必要な対象に検査が迅速に実施されなかった。一方、富裕層は感染拡大の初期に私的な医療サービスを利用して興味本位で検査を受けることもあったという。

コロナ災禍で米国の富益富、貧益貧はさらに悪化した。都市封鎖と自宅待機令が実施される中、失業者が急激に増えた。「正規雇用」という概念さえ一般化していない国では。雇用主がいつでも何の理由もなく勤労者を解雇することができる。しかし失業の拡大はクレジットカードや住宅融資金の負債につながり、国家レベルの債務増大は金融市場に打撃を与える。

コロナ災禍による米国の混乱は、拝金主義と個人至上主義によって引き起こされた現象だ。

いま、米国は目前の危機から免れるために「景気浮揚策」の名目で天文学的な規模の現金を投じている。米国の政府と議会は「世界の機軸通貨」であるドルを意のままに刷っても、国内の納税者と貿易のためにドルを保有しなければならない世界の国々がその負担を担ってくれると打算するかもしれないが、一部の識者は莫大な財政赤字と民間の負債規模が限界に達し、20世紀の大恐慌よりも深刻な状況に陥ると警告している。新自由主義的にグローバル化された経済の心臓部である米国が甚大な打撃を受ければ世界的規模で不況の連鎖反応が起こりえる。

軍事優先と福祉軽視

各国がコロナ災禍の被害を最小化するための国際的な協力と共助の必要性を強調しているが、米国は伝染病対策においても国家利己主義を追求している。「アメリカ・ファースト」を唱える大統領は、国内の感染者、死亡者が増えて経済悪化が不可避になると新型コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼び、中国に責任を転嫁して対決姿勢を強めている。

コロナ災禍というかつてない危機が国際情勢に変化をもたらすとの展望が示されている。

南に駐留する米軍で見感染者が発生し米軍基地への立ち入りが制限された。(連合ニュース)

現在の米中対立についても、感染拡大が収束した後の国際秩序再編を見越した大国の主導権争いがすでに始まっていると見る向きもある。ところが第2次世界大戦で核兵器を使用し、戦後に核武力に基づく戦争政策によって覇権秩序を構築した米国では、すでにコロナ感染症が拡大し、数十日間にベトナム戦争当時の死者よりさらに多くの人々が息絶えた。人間の生命と安全を守るための保健医療制度の拡充は眼中になく、ひたすら軍備増強に莫大な資金を注ぎ込んだ米国の「強大さ」は伝染病によってまたたく間に崩れた。いかなる攻撃も排除できると豪語していた原子力空母で感染症が広がり活動中断を余儀なくされた事実だけでも、核万能主義にとらわれた戦争国家の致命的な弱点が垣間見える。

米国政府は、2021会計年度予算の編成でも社会福祉予算を大幅に削減する一方で国防費を増やした。軍事に対する歳出が最も多い国は米国であり、2018年基準の世界銀行統計によると米国の国防費は中国、ロシア、フランス、英国、サウジアラビア、日本、ドイツの国防費を合わせたものと同じである。

米国はこのような軍事増強を正当化するために「潜在的敵国」の「軍事的脅威」を煽り立ててきた。国内の批判をかわし、責任を外部に転嫁させる米国の軍事主義の手法は、感染症拡大の局面でも繰り返されている。

歴史の転換点で

米国のトランプ大統領はコロナ災禍を「戦争状態」と呼び「戦時大統領」を自称しているが、世界はこの戦争における米国の苦い敗北を目撃している。

新型コロナウイルスのパンデミックが米国の没落を促すという分析と展望まで示されている。人類の歴史と文明の転換点にはペスト、天然痘のような伝染病の流行があったされる。第1次世界大戦が終わるころに起きたスペイン風邪のパンデミックは、覇権国家・英国の没落と結びつく。当時、英国は新興経済大国として浮上した米国から戦争費用を調達し、大戦後に米国は世界最大の債権国になった。

2020年のコロナ災禍の中で起きている出来事も様々なことを示唆している。米中の対立だけではない。たとえば、米国は他国で感染者が発生すると、初めは対岸の火事を見るように対策を講じないまま、朝鮮の「コロナウイルスに対する脆弱性を憂慮」するなどと吹聴し、「国際的な支援」に関する欺まん的な言説を広めた。

朝鮮ではまだ感染者が発生していない。米国は朝鮮のイデオロギーと社会制度に対する体質的な拒否感から朝鮮を孤立圧殺するための軍事的威嚇と経済制裁に執着しているが、朝鮮の安定的な防疫形勢は集団主義に基づくイデオロギーと社会制度、人民大衆第一主義が具現された施策の所産である。

わずか数年前に歴史的な首脳会談を通じて、新たな朝米関係の樹立と朝鮮半島の恒久的な平和、非核化の実現に関する合意がなされた。しかし米国はこれを守らず、朝鮮半島に向けられた時代錯誤の戦争政策を撤回する機会を自ら放棄した。

朝米対話の期限であった2019年末が過ぎ、コロナ災禍が起きると米国の感染者と死亡者が世界最多になった。それは、ほかならぬ米国が最も優れていると主張していたイデオロギーと社会制度の必然的所産であり、下り坂の時代にある超大国の覆うことができない現実である。

(金志永)

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