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撒かれた差別の種、市は自ら回収を/埼玉朝鮮幼稚園へのマスク不配布

さいたま市が新型コロナウイルス感染防止のためのマスク配布対象から埼玉朝鮮幼稚園を除外していた問題で13日、市は方針を転換。埼玉朝鮮幼稚園にもマスクを配布することを決定した。朝鮮幼稚園の対象からの除外は、子どもたちの命の重さに優劣をつけた差別的措置であったにも関わらず、市長が13日に発表したメッセージに謝罪の言葉はなかった。市の決定は問題の本質を棚上げし、批判回避のために成されたものである印象を残したままだ。

さいたま市は6日、新型コロナウイルス感染防止のため、市内にあった約24万枚のマスクを保育所、幼稚園、放課後等デイサービス事務所などの子ども関連施設などに合計18万枚配布することを決定。この基準について清水市長は、13日に発表したメッセージで「131万人すべての市民に配布することは困難」であり、「より優先度の高い対象者に絞って配布することが必要」だったと説明している。

この基準に従うと、当然、埼玉朝鮮幼稚園は対象に含まれるべきであったと、関係者たちは指摘する。

13日に行われた抗議

埼玉弁護士会が13日に発表した会長声明で、同園は教育目的や保育時間、施設設備などにおいて「実態は、支給対象となった正規の私立幼稚園と何ら異なら」ず、「子どもの生命身体の安全を守る必要性は、正規の私立幼稚園と何ら異なるものではな」かったとしているように、同園は配布対象となった施設と同様の幼保事業を行っている。また、さいたま市子ども未来局の担当職員は、昨年10月に同幼稚園を訪問しており、その実態も把握していた。

にも関わらず、市は対象施設の線引きを行う際、施設が市の「指導監督施設」であるかどうかという理由を持ち出し、各種学校である埼玉朝鮮幼稚園を配布対象から除外した。理由は「不適切に使用されば場合、指導監督ができない」というものだった。

これに対し、「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会」(以下、「有志の会」)の中川律共同代表(埼玉大学教授)は「目的と手段があっていない」と指摘する。

13日に「有志の会」が行った抗議行動において、「具体的にどのように使用された場合、指導監督を行おうと想定していたのか」という参加者の質問に対し、市の担当者は「具体的にはなかった」と回答。そもそも「不適切な使用」や指導監督を想定していなかったことを明らかにした。

中川共同代表は、「不適切な使用」も指導監督も想定されていない状況において、市の指導管理下にあるかどうかで配布対象を決めることは「不適切な基準で配布対象施設を決めていることになる」と非難した。

しかし、13日発表の市長のメッセージの中に、そのように「不適切な基準」の見直しや釈明、それに対する謝罪はなく、対象拡大はマスクを「一定の数を確保した」ためだとした。

市の担当者も、今回の対象拡大は「抗議が理由ではない」と強弁したが、10日時点では朴陽子園長の問い合わせに対象拡大について言及していなかったことや、一連の報道の後、市に1日100件以上の電話が寄せられ、その多くが市の措置への抗議のものであったという市職員の説明、13日の市長のメッセージでも埼玉朝鮮幼稚園が対象から除外されていた事実に言及があったことからすると、市の方針転換は批判回避を目的としていた印象が残る。

拡散したヘイトスピーチ

また、13日に行われた「有志の会」による抗議で、参加者たちが特に批判を強めたのが、今回の市の措置がきっかけでヘイトスピーチが拡散されたことだった。

抗議では、今回の件をきっかけにツイッターには「朝鮮保育園にマスクを支給すると本国へ送り軍事転用されるから支給反対」と題するアカウント(現在は凍結)が開設されたことや、SNSやネットニュースのコメント欄に「文句があるならお帰り頂けばいいだけです」「在日特権」「面倒だから親族共々祖国に疎開させましょう。永遠に」などと、ヘイトスピーチやデマが拡散されたことが紹介された。また、本紙の調べによると、一連の問題が報道された後、埼玉初中に匿名の嫌がらせ電話が複数かかってきていることが明らかになっている。

13日に行われた抗議

「有志の会」の渡辺雅之共同代表は、市に差別の意図があったかどうかに関わらず、今回の措置がこのような事態を引き起こしていることを指摘し、それに対する市の見解を尋ねた。市の担当者は「今回のマスクの配布から端を発しているもの」と認め、「許される言葉ではない」としながらも、具体的な対応策について明言しなかった。

渡辺共同代表は「結果として除外をしてしまったことが、ヘイトスピーチ、差別扇動、社会に憎悪の種を撒いているということであるならば、行政として非常に深刻に受け止めなければいけない」とし、現在起きているヘイトスピーチが市の措置から起きているものであると認め、ヘイトスピーチに反対する市の姿勢を明確に示すことを要求した。

また、中川共同代表は、すでに市職員が謝罪しているが、職員が「不適切な使用」の例を問われ、転売などを含むという趣旨の発言をしたことについて、その発言自体が「非常に侮蔑的」だとした上で、一連の在日朝鮮人に対する市民や職員の差別的な発言は、市が不適切な基準で朝鮮幼稚園を除外したことによる「必然的な反響」であると指摘した。

さいたま市が13日に方針を転換し、埼玉朝鮮幼稚園を対象に含めた後にも、ネット上では同幼稚園や在日朝鮮人に対するヘイトスピーチが続いている。さいたま市は今回の措置が差別的措置であり、結果的に社会に憎悪の種を撒いてしまった事実を認め、自治体としてヘイトスピーチ根絶に資するための明確な姿勢を示すべきだ。

(金孝俊)