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イギョラ、ゼウス!イギョラ、ジェイク!/九州青商会、プロレス興行で学校支援

2019年07月26日 11:43 スポーツ

680人が興奮の渦に

九州青商会がプロモーターとなったプロレス興行は680人の観客で盛況を博した

9月22日に「ウリ民族フォーラム2019in九州」(北九州ソレイユホール)を開催する九州青商会が、斬新な民族教育支援活動に取り組んでいる。その活動とは、プロレス興行で生んだ収益を朝鮮学校に還元しようというもの。九州青商会がプロモーターとなった全日本プロレスの「2019 SUMMER ACTION SERIES・北九州」が23日、北九州藝術劇場で行われた。2人の同胞選手が出場した大会は九州地方の同胞やプロレスファンら680人で大盛況を博した。

同胞レスラーに拍手喝采

今回のプロレス興行の発案者は熊本県青商会の康英一会長(39)。きっかけは、16年に行われた熊本地震復興チャリティープロレス大会だった。大会を機にプロレス関係者と知り合った康会長は、そのつながりを朝鮮学校への支援にいかせないかと模索。関係者にその趣旨を説明し、理解を得たうえで興行権を手にすることができたという。

当日は多くの観客たちで盛り上がった

九州青商会としては初めての試み。そのため準備過程には多くの難題に直面し、観客席がどれほど埋まるかなど不安が大きかった。それでも宣伝活動やチケット販売に地道に取り組んだ結果、当日は主催者側の予想を上回る観客たちが集まった。中でも同胞たちの姿が目立っていた。

6試合が行われた大会では一際大きな声援を浴びた選手たちがいた。学生時代に大阪朝高に通ったゼウス選手(37、金繁優)と、北海道初中高出身のジェイク・リー選手(30、李在炅)である。

特にゼウス選手は、試合のプロモーションのため北九州初級や九州中高、女性同盟の集いに足を運んでいたこともあり、老若男女の同胞たちに大人気。6試合目のメインイベントに登場すると、子どもたちがリング近くまで駆け寄り、応援用の紙テープをリングに投げ込む姿も見られた。試合中には、相手となった全日本プロレスの看板選手を上回る「ゼウスコール」が会場から沸き起こった。

観客の声援を集めたゼウス選手(左)

観客の期待に応えるように、得意技のジャックハマーで勝利を決定づけたゼウス選手。試合後はリング上でマイクを握り、肩で息をしながら思いの丈を語った。

「今日はありがとうございました。コマッスンミダ。同胞の皆さんが温かい応援を下さったことに心より感謝しています」

会場から注がれる大きな拍手と歓声を受けて、彼は続けた。

「在日3世である自分は祖先から受け継いだ民族の血、ルーツに誇りを持ち、胸を張って生きています。…プロレスという世界で活躍することで、いつかは朝鮮、韓国、日本をつなぐ架け橋になりたい」

新たな可能性に挑戦

北海道初中高出身のジェイク・リー選手(左)

試合を終えたジェイク・リー選手に話を聞くと、自身もゼウス選手と「共通の思い」を抱いているとしながら、「同胞社会を取り巻く環境は今も昔も厳しい。そんな中で自分たち若い世代は、1世、2世ができなかった形で新しい可能性を証明したい」と力をこめた。

この日会場に足を運んだ同胞たちの中には初めてプロレスを観戦する人が少なくなかったが、リング上のパフォーマンス、とりわけ同胞選手の闘う姿に惹かれていき、試合後は誰もが興奮冷めやらぬようすで帰路についていた。

子どもたちに大人気のゼウス選手(中央)

客席の最前線で試合を観戦した福岡初級の張秀榮さん(初6)は、「(元サッカー朝鮮代表の)安英学選手のことは知っているけど、プロレスで同胞が活躍しているなんてわからなかった。すごいことだと思う」とし、「かっこよかった」と笑みを浮かべた。

興行を振り返った熊本県青商会の康英一会長は「反省点は山ほどある」と率直に打ち明けながらも、明るい兆しが見えたのも確かだと話す。

「九州朝高校時代の親友にプロレスに関して宣伝すると『いつかつぶれる学校のために何をするんだ』と言われた。でも、そんな人たちも会場に来てくれた。今やらないで、いつやるのか。『イギョラ、ゼウス!イギョラ、ジェイク!』と大はしゃぎする子どもたちを、同胞社会の『種』をどう守っていくのか、みんなでもっと考えないといけない」

今回のプロレス興行を皮切りに、九州青商会では既存の民族教育支援活動の形式を見直していこうとしている。同胞たちの寄付に頼るのではなく、「商品を売って利益を得る」という当たり前の商売サイクルを構築し、販売対象者を一般市民に広げて安定的な収入を確保することで恒常的な民族支援活動へとつなげていく。一連の流れを確立するために、九州青商会は事業体の設立へと動きだしている。

(李永徳)

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