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〈取材ノート〉「切れ目」はどこに

2019年02月09日 08:27 コラム 暮らし・活動

江戸時代の吉原遊郭では遊女と客との関係が金銭で成り立っていたそうだ。客の持ち金がなくなると、それまで優しかった遊女は手のひらを返したように冷たくなったという。このことから「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉が生まれたと言われている。

人間関係に影響を及ぼす金銭問題は非常にデリケートだ。支部や分会活動に精を出す熱誠者でも「会費集めには気が進まない」と話す人が少なくない。総聯東大阪南支部のとある分会長(55)もその一人。「正直おっくうだよ」とこぼしながら、常日頃から持ち歩いているという集金台帳をパラパラめくる。

経年によって黄ばみやイタミが目立つ台帳。2002年から今日までの分会同胞の会費納付状況がきっちり書き込まれている。「伝統として受け継がれてきたから」とは言うももの、責任感だけで務まる役割ではないだろう。

「そろそろ次の世代にバトンタッチして分会長も、集金係も引退する時が来たかな。『帳面の切れ目は分会との切れ目』って言うしね(笑)」

冗談半分に語る分会長を前にしながら、残された「任期」を確かめてみようとページをめくってみた。そこでわかった事実は、台帳の紙が紐で束ねられているということ。バインダーのように、パンチで穴を開けた紙を追加すれば、いつまでもページを更新できる仕組みになっている。台帳も、分会との関係も、まだまだ切れなさそうだ。

(徳)

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