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〈ものがたりの中の女性たち 19〉「孤独な夜には朝は遅れてくる」/高官某の母

2019年01月19日 09:00 主要ニュース 文化・歴史

あらすじ

「烈女」とは誰なのか。

昔、ある高官の兄弟が、優秀な若者の出世を阻もうと自分たちの母に相談する。理由を聞く母に兄弟は、その若者の先祖に再婚した寡婦がいるのだと答える。驚いた母は他家の事情をなぜ知っているのかと問うと、風の噂で聞いたと言う。あきれた母は息子らを諭す。

「風の音は聞こえるけれど目には見えないものです。噂などに踊らされて人を中傷するなどもってのほか。ましてやお前たちは寡婦の、この母の息子ではありませんか?!」

恥じ入る息子たちに母は、文字も刻印も摩耗して消えてしまったつるつるの硬貨を取り出して言葉を続ける。

「これがまさにこの母が死の誘惑を振り払い、耐えに耐えた証なのです。眠れぬ不安な長い夜、この硬貨の文字を何度も何度も指でなぞり、涙で夜を越え寂しさに耐えたのです。十数枚になるこんな硬貨を二十数年持ち続け時々取り出しては戒めにしたのですよ」

話し終えた母と息子は共に抱き合い涙を流した。これを聞いた巷の「君子」と呼ばれる者たちは口々に言った。「まさに烈女だ」と。

朴相孝(パクサンヒョ)の姪朴氏は、下級官吏の家に生まれ両親はそう夭逝、祖父母の下で育ち19歳で咸陽の下級官吏林述曾(リムスルチュン)に嫁したが、夫になる林述曾の病状が深刻で結婚生活がままならないと知っての婚姻だった。病弱であった述曾は半年で夭折、葬儀を行った後嫁の道理を守り婚家の両親に心から仕え、夫の死後から2年目の命日(大祥)に服毒自殺を図りこの世を去る。人々は彼女を烈女に封じ、後の世の範とした。


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