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【インタビュー】朝鮮の水問題を考える/グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表

2016年02月03日 13:18 朝鮮半島

「水資源が食糧、エネルギー支える」/水の再生利用、今後の鍵

グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表

グローバルウォータ・ジャパン 吉村和就代表

人々の生活に欠かせない水。現在、人口増加や経済発展にともなう需要増加、地球温暖化がもたらす水害や干ばつなどによって水資源が不安定化し、世界的な懸念を呼んでいる。朝鮮でも近年、深刻な干ばつによる水不足が農業などに影響を与えており、対策が求められている。昨年10月、「東京・平壌虹の架け橋」第4次訪朝団(団長―江口済三郎代表)の一員として初めて朝鮮を訪れた、水問題の第一人者であるグローバルウォータ・ジャパンの吉村和就代表(66)に話を聞いた。

―朝鮮を訪問したきっかけは。

国連ニューヨーク本部勤務時代から水の専門家として多くの途上国や紛争国の水問題解決に従事してきたが、いまだ朝鮮を訪れたことはなかった。朝鮮の水問題に関して信頼できる情報は極端に少ないため、現地で直接水インフラ事情を確認したかった。

―印象深かったことは。

今回、朝鮮側の水問題担当者と面会する時間はとれなかったが、自分なりに各所を見て回りながら感じたことは多い。

平壌の街中は綺麗で高層ビルなども多く、とても驚いた。ほとんどの人がスマートフォンを持ち歩いていたことも印象的だった。

モデル農場を訪れた際には黄金色の稲穂を見ることができた。一方、平壌から板門店に行く途中までにある農村部をバスの中から見ると、秋田出身で幼い頃から田んぼに見慣れてきた私には、やせ細った水田や畑地が目についた。河川の水が少ないことも気がかりだった。

朝鮮の年間降雨量は例年1,000~1,200ミリで世界の平均(800ミリ)よりもはるかに多い。近年は洪水や干ばつが頻発していてその被害も大きいというが、水インフラ(ダム、水路、湖沼など)がしっかりしていれば水道、灌漑などがきちっと出来ると思う。水資源を確保することは、食糧、エネルギーを支えることにもつながる。

―電力事情が厳しい中、国土の80%が山であり、質の良い湧き水などが豊富な朝鮮では現在、自然の地形を利用した水路(「自然流れ式水路」)を各地に建設し、灌漑や上水道事業に役立てようとしている。

ダムの建設を通じて、発電、灌漑、洪水を防ぐための治水、水道供給などをトータルで行えるようにする方式も勧めたい。

最近、白頭山地域(両江道)に大規模な発電所(白頭山英雄青年発電所)が建設されたという。現場の詳しいことはわからないが、山間の流域を総合的に開発すべきというのが私の意見だ。

例えばダムとセットで上流側に浄水場も作る。浄水場があれば下流地域に安全な水を重力で供給できるし、浄水場から出る汚泥には落ち葉などの有機物が含まれているため、乾燥させれば畑や水田の肥料として利用することができ、一石二鳥だ。

―今後の経済発展にともない、水需要はさらに拡大していくと思われる。

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