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〈特集・同胞弁護士物語〉朝大で学んだからこそ得られたもの

2014年02月20日 11:53 主要ニュース

仲間と「なぜ」突き詰めた4年間

司法試験に合格したことを告げると、オモニ(母)は、電話越しに声を震わせた。金英功さん(26歳)は思ってもみなかった涙に少したじろいだが、人知れず息子を案じ続けていたオモニの愛情深さが充分に伝わった。

法律学科8期生で2013年司法試験に合格した金英功さん

法律学科8期生で2013年司法試験に合格した金英功さん

朝大・法律学科8期生の金英功さんは法科大学院(ロー・スクール)で学び、初めての挑戦となった2013年度司法試験を見事にパス。弁護士となるべく現在、静岡県内で司法研修を行っている。埼玉朝鮮初中級学校、東京朝鮮中高級学校を経て朝大に入学した当初は、「弁護士は遠い存在」として映っていたという。

金英功さんが弁護士を目指し始めたのは朝高時代。朝大卒業生が司法試験に合格しているという話に興味がわいた。漠然とした夢が確固たる目標に変ったのは、朝大での4年間だった。

全寮制という環境の中、勉強もさることながら、日本各地から集った同級生と将来について語り合うことも多かった。在日朝鮮人運動をけん引する人材を多く輩出してきた政治経済学部で、各地の専従活動家となることを決意する同級生たち。同胞社会の未来をより良いものにするために「自分たちは何をどうすればいいのだろうか」と、時には夜を徹して議論は白熱した。

もちろん「正解」など見出せなかったが、同じ志を持って歩んでいこうという思いでは一致した。「弁護士として朝鮮学校を守る存在になる」。金英功さんは、そう心に刻んだ。

屈指の難関試験合格を目指したロー・スクール時代も、気持ちは決して折れなかった。「司法試験の合格がゴールではなかったから。弁護士になって同胞社会を、朝鮮学校を守るというはっきりとしたビジョンがあった。今つらくても『これを乗り越えない限り先はない』と常に自分に言い聞かせた。弁護士を目指す動機をしっかりと与えてくれたのは、朝大での4年間。もし自分のためだけに資格取得を目指していたなら、くじけていたと思う」。苦しい時には、各地で頑張る同級生たちの姿が思い浮かんだ。

金英功さんが話す「仲間」の存在。それは同大・法律学科卒業生たちの共通した思いでもある。

「なぜ自分たちは弁護士を目指すのか、同胞社会とはどういう存在かと、大学時代、同級生たちとよく議論をたたかわせた。それこそが財産」だと言い切るのは、法律学科1期生の金敏寛弁護士。在日朝鮮人社会の現状を知れば知るほど、差別是正のための「法的な闘争」が必要だと強く感じた。「朝大は、高い志を持って弁護士を目指せる場所なんだと思う」。

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