朝鮮人強制連行の跡地をたどる 朝大「朝鮮人強制連行真相糾明サークル」


朝鮮大学校(東京都小平市)の学生たちでつくる「朝鮮人強制連行真相糾明サークル」が5月26日、神奈川県横須賀市で「朝鮮人強制連行の跡地を訪ねる」と題したフィールドワークを行った。同サークルはこれまで筑豊、長崎、埼玉、群馬、東京など、強制連行、関東大震災朝鮮人虐殺、東京大空襲犠牲者に関するフィールドワークを行ってきた。横須賀でのフィールドワークは今回で2回目である。

強制労働の傷跡

原田章弘さんの解説を聞く朝大生

原田章弘さんの解説を聞く朝大生

サークルではこれに先立ち約1ヵ月間、「強制連行の傷跡」(神奈川・朝鮮人強制連行真相調査団が発行)をはじめ軍都・横須賀における朝鮮人強制連行関連図書や資料の学習を行ってきた。

目的地の貝山地下壕に到着した一行は、発足当初(1991年)から神奈川朝鮮人強制連行真相調査団の活動に取り組んできた原田章弘さんの解説をうけながら現地を見て回った。かつて横須賀市北部の追浜は、海軍航空隊や飛行場、そして海軍航空技術廠が存在した重要な軍事拠点だった。航空隊や技術廠を囲むように、浦郷地下壕、夏島地下格納庫、野島地下格納庫が点在し、松代(長野)を上回る日本最大13キロの地下壕もここにある。そのもっとも内側に存在するのが貝山地下壕である。この壕は、幅2~6メートル、高さ2~10メートル、全長約2000メートルで、「地下司令部があったところ」である。

地下壕内に入った参加者たちは、トンネルの壁に残るつるはしの削り跡や、ずりを外へ運び出すために敷いたトロッコのレールの枕木跡、旧日本海軍の錨マークが描かれた食器類、竈やその煙を外に出すための煙突、コンクリートの張られた階段や部屋を案内された。中には約10メートル四方の立派な会議室のような部屋もあり、その壁には天皇の写真を飾る窪んだ場所や神棚を設置したと思われる場所もあった。この巨大な地下壕建設には朝鮮半島はもとより日本国内に在住していた朝鮮人が数多く強制連行され辛い労働に従事させられていた。

参加者の金志潤さん(政治経済学部2年)は「この地を訪れて、強制連行されてきた朝鮮人労働者たちがどれほど悲惨な現場で奴隷労働を強いられていたのかを身を持って痛感した。また、あれから70年も経とうとするのに強制連行されてきた総数すら分からないと聞いたが、真相究明が急務だと思った」と話した。

風化させないために

地下壕の中で

地下壕の中で

次に一行は、京急横須賀駅からほど近い良長院(横須賀市緑が丘)を訪ねた。

お寺の山門をくぐるとすぐ左手に「横須賀海軍建築部請負工事殉職者弔魂碑」が建っている。碑には日本人犠牲者とともに、1942年から海軍関係の工事で亡くなった34人の朝鮮人犠牲者の名前も刻まれている。そのうち遺族が確認できたのは、朴福伊さん1人のみ。朴さんの妻は、「夫がどこの組に属していたかも、どんな所で働いていたのかも知らされず、何の仕事をしていたのかも知らなかった。現場が崩れて怪我をしたと聞き、病院に駆けつけたところ、『仲間を救おうと中に戻り、犠牲になった』と聞いた」と話しているという。

解説を聞いていた金玟和さん(教育学部3年)は「このような過去を決して風化させず、このサークルで学んだことを今後、教育現場で後世に伝えていきたい」と話した。

見学後、総聯横須賀支部の講堂で懇談会を開いた。

歴史の掘り起こしの大切さについて考える

歴史の掘り起こしの大切さについて考える

原田さんは「この地域では、朝鮮人を働かせたという歴史は、隠したい歴史になっている」など、歴史の掘り起こしの難しさ、大切さを語った。

サークルの責任者である金宗弘さん(文学歴史学部3年)は「高校無償化適用から朝鮮学校を排除するなど在日朝鮮人に対する日本政府の差別の根源は、過去を隠ぺいし、過ちから学ばないところにある。サークルでは、今後も強制連行の実態を解明するための研究を深め、過去を記録し、記憶するための活動を積極的に行っていきたい」と抱負を語った。

同サークルでは6月27日、関東大震災朝鮮人虐殺事件90周年の取り組みとして、学内で映画「払い下げられた朝鮮人」上映会&パネル展示会を開いたほか、夏休みに北海道で行われる朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨発掘調査にも参加する予定である。

(金哲秀、在日朝鮮人関係資料室長)