〈本の紹介〉金光烈著「内鮮融和」美談の真実ー戦時期筑豊・貝島炭礦朝鮮人強制労働の実態」


歴史の事実から目を背けるな

齢86の金光烈さんの著書、「内鮮融和」美談の真実―戦時期筑豊・貝島炭礦朝鮮人強制労働の実態―が緑蔭書房から出版された。

心血を注いだ著者渾身の労作である。

緑蔭書房、4,500+税

第一章は貝島炭礦の朝鮮人労働者の苦難、第二章は貝島炭礦への朝鮮人来礦史、第三章は貝島炭礦の朝鮮人同化政策を美化した「頌徳碑」と「謝恩碑」建立、第四章は苛酷な朝鮮人管理を赤裸々に語る貝島炭礦「秘重役会議事録」、第五章は貝島大之浦炭礦の犠牲同胞を訪ねて、の全五章(236頁)である。

1969年から40数年間、筑豊炭田地帯に係わり続けて来た著者が、本書で取り上げたのは「貝島炭礦株式会社大之浦礦業所大之浦炭礦」で、所謂「記念碑」、特に「秘重役会議事録」に重点を置いている。

(朝鮮)解放前、大之浦炭礦には悪名高い麻生炭鉱と共に、群を抜いて多くの朝鮮人が強制動員され強制労働を強いられていた。この文書が世に出るまで大之浦炭礦は「温情主義」、「内鮮融和」を社是として特に朝鮮人には気を配って温情を施していた炭礦と見られてきた。

だが「内鮮融和」の本質は、朝鮮人の「内地化」、「日本人化」、「皇民化」、すなわち朝鮮人の同化にあった。貝島炭礦に言いくるめられ、飼いならされたその一部の朝鮮人が、朝鮮人の「内地化」に功績があったとして俵口和一郎(貝島大之浦第八坑主任)に「頌徳碑」を、温情を施してくれたとして会社に「謝恩碑」を建立した。

虐げられていた朝鮮人が坑長に「頌徳碑」、炭鉱会社に「謝恩碑」を建立したことは聞いたことがない。

著者は「記念碑」について、①日朝友好のシンボル視することは間違いであること、②貝島の「温情主義」は二枚舌の一枚しか聞こえない人の言うこと、の二点を指摘している。言い換えれば、この「記念碑」こそが恥ずべき侵略政策が生み出したもの、即ち朝鮮人から朝鮮人的なものをすべて抹殺し、血も心も日本人に同化させようとした「内鮮一体」のシンボルに他ならないのである。

我々は亡国の歴史を再び繰り返してはならない。我が近・現代史は、亡国が事大主義に陥り、忘国と背族から始まることを示している。

また著者は、「朝鮮人強制動員・強制労働」問題は朝鮮史ではなく日本史だと強調している。まさに正鵠を射ていて、論を待たない。

冒頭、本書が「出版された」とした。それはひとえに、立教大学の山田昭次名誉教授や大谷大学の故鄭早苗教授たちの尽力があったからである。

最近、「戦後五十年国会決議」に反対する輩が総結集し始め、日本人の歴史認識を自虐史観と罵倒する連中が跋扈している。結果、日本(人読者)が右傾化して、こうした本は売れなくなっている。

巻末に「本書の理解のために」を書かれた山田名誉教授は、「これまでの朝鮮人強制動員史研究では明らかにされていなかった問題を解明した優れた業績」、「筑豊炭田の調査を四十年もの歳月をかけて行なってきた著者ならではの研究成果」だと評価しつつ、「日本人読者が著者の厳しい批判を謙虚に受け止めて、この歴史に対する反省や、朝鮮人被害者に対する補償の実現など、今後の行動に生かしてくださることを願う」とされた。

日本人読者にたいする名誉教授の厳しい指摘は在日朝鮮人、なかんずく自らのルーツ、出自を知らないか、歴史の真実から目をそむけている新しい世代が謙虚に受け止めて、歴史と自らを省察し、今後に生かしてゆくべきであろう。

強く一読を薦めたい。

(李一満 東京朝鮮人強制連行真相調査団事務局長)