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ボクシング日本ウェルター級タイトルマッチ、同胞ら500余人が観戦

2013年03月26日 16:09 スポーツ

歴史に刻まれる一戦

日本ボクシング史上初の「在日同胞対決」が25日、後楽園ホールで行われた。東北朝鮮初中高級学校(当時)出身で、日本ウェルター級王者の金樹延選手(27、角海老宝石ジム、リングネーム=高山樹延、OPBF東洋太平洋同級4位)が初防衛戦に臨み、朝鮮大学校出身で同級1位の尹文鉉選手(29、ドリームジム、OPBF同級5位)と対戦した。結果は、2-1と僅差の判定により金選手が勝った。会場には、都内みならず両選手の地元の北関東と東北から多くの同胞、関係者ら500余人が詰めかけ声援を送った。

日本ボクシング史上初の「在日同胞対決」が25日、東京・後楽園ホールで行われた(写真㊨が金樹延選手、写真㊧が尹文鉉選手)。

「同胞対決」に沸く

この日、会場は試合前から初の「同胞対決」に沸いていた。

会場には両選手の横断幕が掲げられ、客席はそれぞれ黄色と赤の応援Tシャツを身を包んだ観客で賑わっていた。

歴史的な一戦に沸く同胞応援席。

両選手入場時には、どちらかの応援団に関わらず大きな拍手が起こった。試合中、選手たちそれぞれに送られていた声援も、どこか一体感に包まれていた。

ボクシング関係者からは、「まるで同胞の祭りのように、活気ある雰囲気」「日本タイトルマッチを数多く見てきたけれど、これほどまでに大きな歓声が響いた大会は初めて」などの会話を交わしていた。

試合は、両選手の勝ちへの執念がむき出しとなった激しい攻防戦。迫力ある試合展開が、会場をさらに沸かせた。

仙台から駆けつけた宮城県青商会の崔志学幹事長(32)は、「どちらも応援したい複雑な心境だった。日本の頂点を同胞選手が競い合ったこと自体が、何よりも誇らしい。2人の姿を見て、朝鮮人として生まれて本当に良かったと心から思えた」と語った。

一方、元WBC世界スーパー・フライ級王者の洪昌守選手は「歴史的な一戦になった。日本ウェルター級の最強を決める戦いを同胞選手同士が戦ったことの意義は大きい。後輩の活躍に力をもらったし、在日ボクシング界が盛り上がってると実感した。今後も、さらに上を目指してがんばってほしい」と話した。

「民族教育の勝利」

試合後、金選手は尹選手に対して「相手が同じ在日朝鮮人だからこそ、なおさら負けたくなかった。結果がすべてだから、勝てて嬉しい」と率直な気持ちを語りながらも、「でも文鉉選手は、本当にうまかった。最後まで、自分の山を作らせてもらえなかった。(試合内容には)納得していない」と漏らした。「ふだんは優しい先輩なのに、リングの上での強さに驚いた。また一緒にリングに立ちたい」。

19歳の時、ボクシングをはじめた金選手。20歳でプロデビューし2008年には全日本ウェルター級新人王を奪取した。強気で負けず嫌い。持ち前の根性で、日本王座に上り詰めた。

一方、同時期にプロデビューした尹文鉉選手もまた、全日本新人王決定戦のスーパーライト級で王者に。東京朝鮮中高級学校と朝大ボクシング部、そしてアマチュア経験を経て確かな実力を培っていた。

共に朝鮮学校出身の同胞プロボクサーであった両選手の親交は深い。これまで、互いに切磋琢磨しながら成長を見守り合ってきた。

試合前には、互いに「同胞社会に元気を与えられれば」(尹選手)、「在日朝鮮人のプライドを背負ってリングに臨む」(金選手)と意気込みを語っていた。

在日朝鮮人ボクシング協会の梁学哲会長は「日本ボクシング界の頂点を競う場に、民族教育を受け、しっかりとした軸を持った同胞青年たちが立ったことに歴史的意義がある」としながら「試合の勝敗に関わらず、民族教育の勝利と言いたい」と健闘を称えた。

試合後、金選手は「(朝鮮学校を取り巻く)環境は厳しい。けれど自分は、民族教育を通じて色々なことを教わったから(朝高を)卒業できて本当によかったと思っている。自分はボクシングという分野で勝負しているけど、どこにいても、それぞれが朝鮮人としての芯を持ってがんばってほしい」と各地の朝高生たちにエールを送った。

(周未來)

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