関東大震災朝鮮人「虐殺」→「命奪われた」/都教委が高校副読本を書きかえ


関東大震災の朝鮮人虐殺現場

「事実を隠さず、反省すべき」

東京都教育委員会が独自に発行する高校日本史の副読本「江戸から東京へ」で、1923年9月1日の関東大震災時直後に起きた朝鮮人虐殺に関する記述から「虐殺」などの文言を来年度版から修正することになった、と朝日新聞(1月25日付)が報じた。

この報道によれば記述の書きかえは「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」に関する記述。2012年度版は「大震災の混乱のなかで数多くの朝鮮人が虐殺された」とあったが、13年度版では「碑には、大震災の混乱のなかで、『朝鮮人の尊い命が奪われました』と記されている」とした。都教委高等学校教育指導課が、副読本の「誤解を招く表現」を再検討。朝鮮人虐殺の記述変更について、担当者は「いろいろな説があり、殺害方法がすべて虐殺と我々には判断できない。(虐殺の)言葉から残虐なイメージを喚起する」としている。副読本を監修した専門家には相談しなかったという。同記事はまた、「朝鮮人虐殺をめぐっては、国の中央防災会議は08年、関東大震災の報告書で、流言による殺傷事件の対象は朝鮮人が最も多かった」とし、「虐殺という表現が妥当する例が多かったと認定している」と報じている。

一方、東京新聞(1月26日付)は猪瀬都知事が25日の記者会見の席上、この記述変更をどう考えるかと問われて、「形容詞を少し変えるぐらいのことは、たいした意味はない。もし、変えるのであれば、風評被害の怖さをきちんと別枠でつくる発想があっていい。ただ、表現がオーバーになっていて、表現だけが独り歩きしている場合は、ある程度きちんとした表現に組み替えることも必要と思います」と答えたと報じた。

「地域に学ぶ関東大震災」の編者であり、「関東大震災時の朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」事務局長の田中正敬・専修大学教授は、この報道が事実だとすれば、「問題点の第一は、『虐殺』という文言が削られたことに加え、「碑には~『朝鮮人の尊い命が奪われました』と記されている」として、資料上からも明らかな朝鮮人虐殺の事実を単なる碑の解説にすりかえたことである。問題の第二は、担当者が、監修者の了解も得ずに勝手に書きかえたという手続きの問題である。書きかえ前の記述も虐殺した側である、日本の軍隊や民衆などを明記しないという問題を抱えていたが、この書きかえには事実をさらに矮小化する意図が感じられる。そうでないとするならば、どのような『検証』を経て書きかえを行なったのか、具体的な過程を明らかにすべきである」と指摘した。

「地域に学ぶ関東大震災」の筆者の一人である小薗崇明(専修大学大学院文学研究科博士後期課程在籍)さんは、「今年、これまで千葉県内の関東大震災下の朝鮮人虐殺に関して精力的に証言し、中台墓地(八千代市)の慰霊碑建立に尽力した方が99歳で亡くなられた。今年は関東大震災から90周年を迎えるが、虐殺の目撃証言を得るのはほぼ不可能だ。そんな中、虐殺の記憶の継承はいかに可能かが問われている。副読本の「虐殺」→「命が奪われました」という表現の変更は、歴史的問題を曖昧にさせ、歴史の忘却に繋がる可能性がある。日本の植民地支配における人為的な問題を単に震災の混乱という偶然に原因をすり替えることで、『しょうがない』と忘れさられるのではないかとても心配だ」と話した。

40年近く関東大震災時における朝鮮人虐殺の真相を追及してきた平形千恵子さんは、「73年に建てられた東京都慰霊堂にある朝鮮人犠牲者追悼碑には『一九二三年九月発生した関東大震災の混乱のなかで、あやまった策動と流言蜚語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました』と書かれている。13年版の副読本の記述変更には、この最後の部分しか書かれていない。記述変更するなら、きちんと丁寧にこの文章を使うべきだ。理由もなく殺された人は虐殺ではないのか。残虐だから虐殺という。デマだけで人を殺してもいいという法律はどこにもないし殺されてもいい人間なんていないはずだ。日本の子どもたちには、事実をきちんと教えないと将来も、朝鮮や韓国、中国との友好を結ぶことができない。真実を隠してはならない」と話述べた。

今日まで約30年以上、関東大震災における朝鮮人虐殺の真相を調査し、その証拠を残そうと資料集め、証言者らの聞き書き作業に奔走してきた、一般社団法人「ほうせんか」の代表を務める西崎雅夫さんは、都教委に今回の措置について、「なんと言おうとまぎれもなく虐殺だった」と反論の声をあげた。また、これは日本の政治の大きな動きの一つだと指摘した。関東大震災における朝鮮人虐殺のみならず、「慰安婦」問題に関し「強制ではなかった」など、「歴史を改ざんし、なかったことに仕立てようとする動きは、安倍政権以降急速に高まっている」と危惧する西崎さん。関東大震災90周年を迎える今年、「ほうせんか」では事実を基に伝えていくことでこれまで以上に多くの関心を寄せるため、9月1日には東京・八広の荒川河川敷で追悼コンサートを行う予定。「今後も虐殺の真実をいっそう広め、国家の責任を追及していきたい」と話した。

(朴日粉、尹梨奈、金秀卿)