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〈高校無償化〉運動の現場から/活動通じて深まる絆、日本人の仲間に支えられ

2013年01月24日 07:10 主要ニュース 民族教育

「高校無償化」制度施行(2010年4月)から3年弱。全ての高校生が「教育にかかる費用を心配することなく、安心して勉強に打ち込めるように」と導入された画期的な教育制度は、朝鮮学校への露骨な差別を公然化する引き金となってしまった。問題浮上以降、地方自治体による補助金は相次いで停止。現在は、朝鮮学校そのものを適用対象から排除する動きにまで発展している。「国家権力による差別」「朝鮮学校の処遇は、(制度施行)以前より悪くなっている」-朝鮮学校生徒、保護者、関係者の声には憤りと不安、困惑が入り混じっていた。その一方で、「高校無償化」運動を通じて朝鮮学校の認知度が広がりを見せたのも事実だ。また朝鮮学校関係者にとっては、多くの日本人支援者の存在に気づかされ背中を押される日々でもあった。

当事者より、当事者らしく

「高校無償化連絡会・大阪」(2012年3月)結成集会の場で、壇上で共闘を呼びかける弁護団メンバーら。

問題が発生して以来、各地では朝鮮学校関係者と弁護士、そして日本人支援者が一体となった支援ネットワークが次々と結成された。署名活動や集会、デモ行進、学習会などが頻繁に行われた。各地のネットワークでは賛同者が増え、運動は大きなうねりとなって展開されてきた。

驚かされたのは、その中心となって活動を行う日本人支援者たちの当事者意識の強さだ。 大阪で立ち上げられた「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」(昨年3月)の結成集会では、壇上に立った若き日本人弁護士が「無償化問題は、日本社会をより豊かにするための闘いだと思っている。解決のために、僕らを最大限に利用してほしい」と呼びかけていた。

また「連絡会・大阪」では昨年4月から、制度適用と府による補助金支給再開を求め、朝鮮学校関係者と日本人支援者らが毎週火曜、大阪府庁前でデモ活動を行っている。

雨天、炎天に関わらず毎週デモに参加している大村和子さん(68)は、「植民地支配の加害者である日本人が、在日朝鮮人に対して無関心であり続けること自体が加害行為と言える。府民の目を見て訴えることで、朝鮮学校への理解を広めたい」と語っていた。

ともすると、当事者より当事者らしく運動に取り組んでいるように思える。彼らの姿を見ながら、しばしばそう感じた。

朝鮮学校保護者の李昶林さんは、日本人支援者の姿に触れ、「当事者として目が覚める思いがした」。山本さんは、「正直、適用はもう無理かもしれないという思いがあったけど、朝鮮学校を愛する保護者として、多くの日本の賛同者と最後まで共に頑張っていきたいと思う」と述べた。

総聯大阪府本部の朴栄致部長は、「途方もない闘いに、保護者や学校関係者など現場は疲れ果て、諦めがちになる時もある」と現状を話しながら、「日本人支援者たちの適用まで絶対にたたかい抜くという企画に、『当事者が本気ださんかい』と活を入れられた思いがする」と語った。

初めて出来た日本の親友

「朝鮮学校にも差別無く高校無償化を求めるネットワーク愛知」共同代表兼事務局長の山本かほりさん(47、愛知県立大学・准教授)は、2011年9月から週に1度のペースで愛知朝鮮中高級学校を訪問している。日常的な関わりの中で、朝鮮学校との絆を深めてきた。

「朝鮮高校無償化ネット愛知」の山本かほり共同代表兼、事務局長(左)と、愛知中高オモニ会の許淑禮会長。

山本さんは、「高校無償化」問題について「国家が公然と差別を行う現状を、見ていていい訳がない」としながら、その上で朝鮮学校の生徒や保護者に内面に寄り添った形で支援活動を行いたいと話す。「朝鮮学校はあくまで教育現場であり、生徒たちは日本の子どもたちと同じように勉強や部活に忙しい。一般的な運動理論では現状と乖離すると思う」と話す。月日を共にする過程で生徒たちからは悩みを打ち明けられたり、保護者からは「オンニ」と慕われるようになった。愛知中高では、今や、日常にして当たり前の存在だ。

同校オモニ会の許淑禮会長(49)は山本さんと接し、「初めて日本の親友が出来たようだ」と語る。「私の中で、日本人とは分かり合えないという内なる壁があったのかもしれない。けれど、私たちと同じように子どもたちに思い切り愛情を注ぐ姿を見ながら、今では本心から共に朝鮮学校を守ろうとする仲間という意識が芽生えている」。許会長は、問題の長期化により気持ちが諦めがちになる中でも、かしこまらず本音で語り合える、こうした仲間の存在に支えられていると語っていた。

また同校2年の康成守さんと李英実さんは、日本人支援者の存在について「心強い。日本学校の生徒と同じ視点で見てくれることが嬉しい」と口を揃える。「日本社会にいて、露骨な差別は日頃感じにくい。けれど今回の問題もそうだし、やっぱり私たちは日本の生徒たちとは違うんだなと思わされることもある。(日本人支援者は)日本学校と朝鮮学校は何ら差はないということを教えてくれる。私たちと日本社会を繋ぐ橋のような存在かもしれない」。

愛知・大阪では今月24日、同時刻に「高校無償化」適用を求める趣旨の訴訟を起こした。問題のさらなる長期化が見込まれる中、今後も、朝鮮学校関係者、日本人支援者による厚みのある活動展開が求められている。

(周未來)

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