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朝大朝鮮問題研究センター設立1周年記念シンポジウム「海外コリアンの民族文化と統一意識」

2012年11月12日 16:01 主要ニュース 民族教育

「違い」を前提に、統一を考える

南の学者招き初開催

朝鮮大学校朝鮮問題研究センター設立一周年記念シンポジウム「海外コリアンの民族文化と統一意識―新しい『統合』モデルに関する人文学的省察―」が10日、東京・小平市の朝鮮大学校記念館講堂で開催された。シンポジウムは、同センター、立命館大学コリア研究センター、建国大学校統一人文学研究団の3者共催で開かれた。開催場所となった朝大に南の学者を招き入れて学術交流を行うのは初めて。李明博政権発足後、南北関係が一触即発の危険にさらされるほど冷えきった「冬の時代」に、祖国統一を目指す6.15、10.4精神を喚起させる意義深い学術交流となった。

朝大朝鮮問題研究センターの康成銀センター長は、同センターが昨年11月5日、同校創立55周年記念行事に際して、日本における朝鮮研究、とくに在日朝鮮人関係史研究の拠点の一つとして、学内教育と学術研究国際交流の向上を図ることを目的に設立されたと述べ、この一年間、現代朝鮮研究室、朝鮮文化研究室、民族教育研究室、在日朝鮮人関係資料室を開設し研究活動を行ってきたと振り返った。そして、今回のシンポジウムは、分断によって煩雑にならざるを得なかった海外コリアンの民族文化と統一意識の状況を考察し、北と南、海外同胞の差異を前提にした次の段階(統一朝鮮)の新しい「統合モデル」の可能性について考えるというものだと話した。

会場には、朝鮮大学校の教職員、学生はじめ、たくさんの在日同胞、日本人、南朝鮮の研究者および学生らが詰めかけ、関心の高さを示していた。

シンポジウムでは、康センター長による開会の辞、立命大コリア研究センターの勝村誠センター長(代読)、建国大統一人文学研究団の金成玟団長の祝辞に継いで、第1部では、6人の学者たちによる学術報告、第2部では総合討論が行われた。

第1部の発表内容は、「在日同胞の民族舞踊を考える」(朴貞順・朝大教育学部)、「在日コリアンの美術について」(李鏞勲・朝大教育学部美術科)、「日本の『韓流』現象と在日コリアン」(佐々充昭・立命大文学部)、「コリアンの『民族的アイデンティティ』比較研究」(朴英均・建国大統一人文学研究団)、「コリアンの分断・統一意識比較研究」(李炳秀・建国大統一人文学研究団)、「朝鮮学校の『国民主義的教育』と『超国家的主体』の形成」(宋基燦・大谷大学文学部)。

朴貞順教授は、植民地期から現在に至る在日朝鮮人社会においての民族舞踊の普及と活動について、貴重な証言と写真資料などを用いて報告し、在日1世から3世の舞踊関係者へのインタビューや2008年に500人あまりの朝鮮学校の舞踊部児童・生徒を対象に行なったアンケート調査などを駆使して、民族舞踊に対する在日朝鮮人の意識について掘り下げた。

佐々充昭教授は、今日日本で起こっている韓流ブームには、戦前の植民地支配や在日コリアンに対する差別という日本と朝鮮半島の負の歴史を想起させるような要素は排除・隠蔽される傾向があると述べ、「韓流ブームには、朝鮮半島の南半分である大韓民国に国家イメージを収斂させ、北朝鮮の存在を無視・捨象しようとするベクトルが動き、民族統一を求める在日コリアン社会に混乱やアイデンティティの葛藤などを同時にもたらしている」と指摘。一方、韓流ブームに便乗・呼応して制作された「在日」関連映画は、韓流とは別の脈絡に属するものであり、日本人が朝鮮植民地支配の責任や未だに存在するポストコロニアルな差別構造の撤廃に真正面から取り組まない限り、日本と在日コリアンとの関係は本質的に変わるものではないと話した。

第1部の司会は、李柄輝・朝大文学歴史学部准教授が務め、第2部では、徐勝・立命大コリア研究センター顧問の司会で総合討論が行われた。

その後、レセプションが開かれ、張炳泰・朝大学長が、祖国統一をテーマに3者共催で有意義なシンポジウムを開催できた喜びについて語り、「朝大が今後とも朝鮮問題研究の一つの拠点として活動し続けていくため積極的な支援と協力を求めたい」と乾杯の辞を行った。

(文-金潤順)

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