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〈投稿〉理屈のいらない涙、南北首脳会談に思う / 朱齢淑

2000年06月30日 16:28 暮らし・活動

50歳になる在日朝鮮人2世です。

南北首脳会談の知らせを聞いた時に最初に思ったことは、亡くなった1世の両親のことでした。この歴史的な、また後世にいつまでも残るであろう出来事を目前にしながら逝ってしまわれた1世の人たちに、まず心から喜んで下さいとお祈りします。

4年前に亡くなった私のしゅうとは、その2日前にはっきりとした声で、孫である私の娘に最後の言葉だとして、「お前は誇り高き朝鮮人としてしっかりと生きてほしい。そして私の骨は何があっても日本の地に埋めないで欲しい」と言い残しました。

在日同胞が70万人いるとすれば70万とおりの生き方があり、皆が同じ方向を向いているわけではありません。でも祖国は1つなのです。ゆえに今回の会談で、久しく忘れていた感動という気持ちを呼び起こされました。

金大中大統領がソウルを発つ時、平壌に着いた時、そして金正日総書記が空港にいらした時、その一場面一場面をリアルタイムで伝えるテレビを見ながら、流れ落ちる涙を拭うことができませんでした。理屈のいらない涙なんて恐らく初めてでしょう。

でもそれから少し時間がたって周りを見ると、日本のマスコミをはじめとする言論人たちは、本当に掌を裏、表にしながらあれこれ書き、また流しています。ある国際政治学者という人はテレビで「北朝鮮は今回、本当に金のかからない外交をやった。食事代しか使ってないから。日本も見習わなくては」と言い放ちました。

「許せない!」というのが正直な気持ちですが、そんなことにいちいち反応していたらこの日本では暮らしていけません。色々なことがあっても1世の魂を受け継ぎ、祖国を心の拠り所にして乗り切ってきました。

今回の出会いは両首脳が言っているように本当の始まりです。これからプロセスに入り、そしていつの日かゴールが来ます。それがいつになるかは分かりませんが、幸せな気持ちのいいゴールであって欲しいと願っています。私たちの後に続いていく世代のためにも。

最後に、「よかったね」「おめでとう」と喜んでくれた日本の友人たちにお礼を言いたいと思います。ありがとう。

(香川・高松市在住、主婦)

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